映画『苦役列車』の予測のつかないおもしろさ
公開2日目に映画版『苦役列車』を見た。西村賢太の原作が好きだったし、山下敦弘監督があの世界をどう料理するか興味があった。『マイ・バック・ページ』では封じられていた、山下監督らしい予測のつかない感じの展開が良かった。
西村賢太の小説と比べたら、明らかに違う。それは、主人公貫多を演じる森山未来が出てきた瞬間から明らかだ。カッコ良すぎる。1980年代半ばを再現したというが、その時代を主人公たちの年齢で生きた者としては、これもちょっと違う。
それでもおもしろいのは、中卒で日雇い労働者の貫多の生き方にどこか筋が通っていて、ギリギリの魅力があるからだ。職場で九州から出てきた素直な専門学校生(高良健吾)と仲良くなり、本屋に勤める憧れの少女泰子(前田敦子)を誘って海に行くシーンの「青春ぶり」は、ストレートに迫ってくる。
歌手の夢を持ちながら職場で事故にあう先輩のエピソードも、予測がつかない。カラオケバーで突然「襟裳岬」を歌いだすシーンには震えてしまった。土砂降りの中を泰子の自宅で待ち伏せてキスを迫るシーンも展開が読めなくてドキドキしたし、昔の彼女と偶然会って彼女の部屋に行き、彼女の男が出てきてからの展開もすさまじい。
本を愛し、古風な物言いのダメ男貫多が、取り巻く人々と微妙な間合いを保ちながら、淡々と生き続ける。そして3年後原稿を書きはじめる、という終わりも取ってつけたようだが、悪くない。
山下監督はちょっと昔の自主映画に戻った感じで良かったが、東映系のチェーン公開には内容的に無理があったかもしれない。丸の内TOEI②の350席が、二日目の日曜4時半で1/3も埋まっていなかった。知り合いの東映のK氏が「企画」として名前が挙がっていたが、大丈夫かな。彼が手がけた李相日監督の『69 Sixty Nine』とタイプが似ている気がしてきた。
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