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2012年8月 8日 (水)

『ビラルの世界』の明るい貧困

最近偶然にドキュメンタリー映画ばかり見ている。『イラン式料理本』、『フタバから遠く離れて』の次に見たのは10月公開のインド映画『ビラルの世界』。その「明るい貧困」とでも言うべき世界に、またガツンとやられた。

入り組んだスラムに全盲の両親と暮らすビラル。とにかくいたずらばかりして、大騒ぎだ。そのうえ隣の家の物音もすべて聞こえ、イスラムの祈りが鳴り響き、映画全体が唸るような喧噪のなかで過ぎてゆく。

とりたてて筋はない。ビラルの底抜けに明るい毎日が描かれるだけだ。事件らしい事件は、父親が商売を始めたことか。お金がないからと街なかに机を出して、電話を貸すサービスを始める。何と固定電話の話で、携帯電話など夢の夢の世界。もう一つの事件は、ビラルが割礼を受けたことか。「痛い」と派手に泣き叫ぶ。

全盲の両親も、ビラルも不幸な感じが全くしない。むしろいつも明るくて楽しそうだ。将来の心配はしているけれど、あまり不安がっているようには見えない。

見終わって渋谷の人工的な街とそこに歩く人々を目にして、『ビラルの世界』の「明るい貧困」が美しく見えた。

ドキュメンタリー映画は、とびきりおもしろい人間を見つけたらまず半分成功だ。それからその人間の行動や語りの中から決定的な瞬間をカメラに収めること。そのためには、写る対象に向かい合い、じっくりと関係を作る必要がある。最近見たドキュメンタリー映画は、どれもそうした「時間の蓄積」の産物だった。

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