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2012年8月11日 (土)

“岩井ワールド”、外国人相手でも変わらず

岩井俊二監督がカナダで英語で撮った『ヴァンパイア』(9月15日公開)を見た。いわゆる“岩井ワールド”が、外国人を相手に撮ったらどうなるか楽しみだったが、結論から言うと「あいかわらず」だった。

つまり、華麗な映像をたっぷり見せるけれど、どこか独りよがりな感じ、である。今回の物語は、高校の生物の先生がネットで自殺者を募り、やってきた女性を先に殺して血を飲む、というもの。ネットを通じて集まる集団自殺という現代日本的な物語に、吸血鬼という西洋起源の伝説を組み合わせた構造だ。

何より、映像の造形力が際立つ。女性を殺すのに、睡眠薬を飲ませて、両足、両手に針を刺して血を抜いてゆく。女が白い板に横たわり、四方から血が管を通って出てゆくシーン。あるいは主人公は認知症の母親に風船をたくさん付けて、動きやすいうえに外に出られないようにする。たくさんの白い風船が背中に繋げられて舞いながら、無言で動く母親のシーン。こうした人工的な造形美を作りだすことにかけては天才的だ。

カナダの寂しそうな田舎町もいい。主人公の家のそばにはモノレールが走り、近くには何とも気の滅入りそうな湖がある。

主人公は、彼と結婚したい女が付きまとったり、集団自殺に巻き込まれたり、日本人留学生のミナ(蒼井優)の自殺のケアをしたりと大忙しだ。そうして自らが献血をする羽目にさえなる。

ラストの母親のショットはショッキングだし、その後の、最初に戻るようなシーンも悪くない。けれど、全体を通じて私の心に訴えかけるものは少なかった。もともと私は“岩井ワールド”は得意でないから、しょうがないかもしれないが。いずれにしても、吸血鬼映画の系譜に、相当変わった1本が加わったことは確かだ。

話は変わるが、昨日の朝日で映画欄がなかった(1ページあったが、あそこは映画専用ではない)。大震災の後に朝日だけ映画欄を潰したが、今度はオリンピックの女子サッカーやレスリングの決勝でそうなのか。やはり、時流に乗ることばかり考えている新聞か。

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