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2012年8月 1日 (水)

映画『私たちの宣戦布告』の不思議な新しさ

9月封切のフランス映画『わたしたちの宣戦布告』を見た。去年のカンヌ以来フランスでずいぶん話題になっていたが、ようやく公開が決まったようだ。期待して見に行ったが、なるほどフランスで受けた理由と日本で公開が決まらなかったわけがわかる、ちょっと不思議な新しさを持つ映画だった。

なぜフランスで受けたか。それは赤ん坊が脳腫瘍と診断された夫婦を描く悲劇を、軽やかなタッチで描いたからだ。ナレーションを多用し、テンポよく物語を進めてゆく語り口は、まるで初期のフランソワ・トリュフォーを思わせるくらい新鮮だ。あるいは一か所、夫婦が突然デュエットで歌い出したりするシーンなんて、まるでジャック・ドゥミの映画みたい。

子供が脳腫瘍とわかり、それが携帯電話を通じて家族みんなに伝わる悲劇的なシーンは、ヴィヴァルディの「四季」の「冬」に乗って、まるでカリカチュアのように描かれる。一つ一つのカットは、即興で撮ったドキュメンタリーのようなのに、編集や音楽は極めてポップだ。明らかに監督の知性溢れる作品だと思う。

ここまでは、フランス的見方。日本の配給会社にとって、まずスター(日本人が知っている俳優)のいないフランス映画はお呼びでない。かつ赤ん坊に脳腫瘍が見つかって苦労する夫婦の話なんて、最低のテーマだ。それにこの映画は悲劇と喜劇がこんがらがって何を言いたいのか、はっきりしない。終わりもわかりにくいし、要はいつもの自分勝手なフランス映画じゃないか、と。

もちろん日本の観客がどう見るかはこれからだが、私は意外に受けると思う。家族が難病になるなんて、よくあることだし、それを懸命にしかし淡々と乗り越えていく姿は、日本人にとってもリアルだと思う。フランス映画にありがちな、愛を特権化して自家中毒に陥るような映画ではなく、夫婦の生き方、家族のあり方を等身大で描いたこの作品は、日本人も共感しやすいのではないか。

ちなみに題名は、劇中で夫婦が聞くラジオで、「アメリカがイラクに宣戦布告しました」というところから来ている。原題は「宣戦が布告された」。原題を尊重する邦題は好きだが、『わたしたちの宣戦布告』は題名としてかたすぎないか、ちょっと心配だ。

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