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2012年8月 2日 (木)

『ディクテーター』の破壊的ユーモア

9月7日公開の『ディクテーター 身元不明でニューヨーク』を見た。既にとんでもない予告編が劇場に出ている、例のサシャ・バロン・コーエン主演の映画だ。普通、このたぐいの映画は見ないが、一日中家で本を読んでいたら朦朧としてきたので、18時の試写にパラマウントに行った。

まず、「親愛なるキム・ジョンイルに捧ぐ」という文字から映画は始まる。そして北アフリカのワディア共和国の独裁者、アラジーン将軍(サシャ・バロン・コーエン)のとんでもない日々が映し出される。オリンピックの陸上では、競争相手を銃で殺しながら一位になり、夜はハリウッド・セレブをベッドに連れ込む(本物のミーガン・フォックスが出てくるほか、ハリウッド・スターと将軍の写真が壁にずらりと並ぶ)。

国際社会から核開発を非難された将軍は、国連での演説に臨む。ところが、何者かによって拉致されてヒゲを剃られ、国連には替え玉が立つことに…。それから始まるてんやわんや。

とにかく全編、破壊的ユーモアでぶっ飛んでいる。アラブ人をバカにしたり、言ってはいけない言葉のオンパレードだ。とりわけ中国人の扱いはひどい。人間はお金で何とでもなると豪語する中国の首相は、エドワード・ノートン(本人が登場)に下半身をしゃぶらせ、「ヴィゴ・モーテンセンに次はおまえだと言ってくれ」。

何とか署名の式のあるホテルに入ろうとする将軍は、隣の建物からロープをつたって近づくが、その途中で大便を路上に落としたり、下半身をむき出しで(本当に見える)窓に突撃したりと、下品の極みだ。

それなのに、彼の最後の演説がいい。独裁政権がいかにすばらしいかを述べながら、いつの間にかアメリカの現状を非難したり、恋人への愛の告白になったりと、自由自在。恋人と結ばれて一件落着かと思いきや、最後の最後まで笑わせてくれる。

83分という短めの作品だが、皮肉や当てこすりがぎっしり込められている。このユーモアをどの程度理解できるかで、見る人の世界レベルの知性がわかるかもしれない。こんな映画もあっていい。

サシャ・バロン・コーエン演じる将軍の補佐をするタミール叔父役のベン・キングズレーが、いかにもアラブの参謀風ではまり役だ。この二人のコンビを最近見たと思っていたら、『ヒューゴの不思議な発明』だった。

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