『東京プリズン』に?
映画の場合はみんながホメても、自分にはピンとこないものが2割はある。小説の場合はもっと少ない気がしていたが、赤坂真理著『東京プリズン』は違った。最近、新聞や雑誌の書評で大絶賛の嵐の小説だったが。
1980年に16歳でアメリカに留学していた時の体験を現在から振り返り、戦時中に東京裁判の翻訳をしていた母の記憶とも重ね、さらに3.11とも重ねるという壮大な構想だ。天皇制、日米関係、戦後民主主義など、巨大な問題を、あくまで自分の記憶と感性だけで語ろうとする。
ここまで来ると、絶対に自分が好きなタイプの小説のはずだが、最初から最後まで全くピンとこなかった。そもそも高校生でアメリカに留学した時の苦しみが、私にはわからない。アメリカ人というのはいい意味でも悪い意味でも「ボンクラ」としか思っていないので、彼らの「ディベート」に参加して云々という話が全くわからない。
日本人の外国好きには、大きくいうと3つに分かれると思う。アメリカ好き、ヨーロッパ好き、アジア好きだ。私はもちろんヨーロッパ好きだが、それは控えめにして、表には出さない。ところがアメリカ好きの人々は、それが当たり前のような顔をしているところがある。この小説への抵抗感はそこにあるような気がする。
もう一つ。母と娘の強烈な愛憎関係が自分には全くわからない。これはどうも都会の母娘関係ではないかと思う。正直、気持ちが悪い。
そんなこんなで、『東京プリズン』は?だった。
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