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2012年8月28日 (火)

意外におもしろい『トータル・リコール』

『プロメテウス』を見たら、もっとSFアクションを見たくなって、『トータル・リコール』を見た。藤崎康氏がWEBRONZAで、地球が富裕層と労働者層の住む2つの地域に分断された物語で、労働者層の街は『ブレード・ランナー』そっくりだと書いていたのも気になってもいた。

地球が金持ちと労働者に分断されるなんて、フリッツ・ラングの『メトロポリス』(27)ではないか。そして『トータル・リコール』と同じフィリップ・K・ディック原作の『ブレードランナー』(82)のアジア風の街が再現されるなんて。そもそもこの映画自体、90年のリメイクだし。
最初に富裕層が住む「ブリテン連邦」(UFB)が英国あたりで、労働者の住む「コロニー」がオーストラリアを指す地図が出たのは笑ってしまった。本来ならコロニーは中国にしたいだろうけど、すると冗談で済まなくなるだろうなどと考えた。労働者は毎日地球の中心を通る巨大なエレベーター「フォール」で、17分かけて、UFBに通う。

UFBの街は、どこかクラシックで『メトロポリス』みたいだし、コロニーは、『ブレード・ランナー』と同じくいつも雨が降っていて、昔の香港の裏町はこうだったのではと想像させるくらい細部までよくできている。『ブレード・ランナー』は日本風だが、この映画は全体に中国風で、時おり日本語やハングルやロシア語、アラビア語もある。提灯がたくさんあって、運河に船を浮かべたり、何とも幻想的でいい雰囲気だ。

物語は、コリン・ファレル演じる主人公が、「リコール社」で新しい記憶を注入しようとして、自分がかつてスパイだったことを悟るというもので、妻役のケイト・ベッケンセールとのアクションがくどいくらい多い。それにかつての恋人役のジェシカ・ビールも加わって、何だか女の戦いみたいになる。

アクション部分は少し退屈したが、何よりいくつものSF映画へのオマージュが良かった。透明のガラスにデータを映し出す感じは、同じディック原作の『マイノリティ・リポート』(02)も思わせる。また、「記憶」というものを妙に考えさせられた。

最近、同窓会で会った中学の同級生とメールのやり取りをしているが、自分が覚えていないことが何と多いのか実感している。記憶とは、自分の都合のいいように各自が作り変えたものだと、この年になるとつくづく思う。

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» トータル・リコール [ここなつ映画レビュー]
安心して鑑賞できる作品。というと、語弊があるかもしれないけれど、SFの構成がきちんとしていて、こういう作品にしては珍しく論理の破綻がない。近未来都市の都市構造も映像もリアルだし、描写にはダイナミズムがある。それも、ある種の暗い、影のあるダイナミズム。その描写が妙に美しい。「ブラック・レイン」のような作品に共通して感じる、退廃的な美しさ。 ちょっと褒め過ぎかな?ま、コリン・ファレルに免じて許して下さい。コリン・ファレルも、やさグレた底辺階級風のテイストがそのまんまよく似合っていてイイ感じ。 ... [続きを読む]

受信: 2012年8月31日 (金) 19時45分

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