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2012年8月25日 (土)

クローネンバーグの新作は

10月27日公開のデヴィッド・クローネンバーグ監督新作『危険なメソッド』を見た。昨年のベネチアで見た日本人たちが「?」という顔をしていた映画だ。フロイトとユングの議論が難解という人もいたので、日本語字幕なら安心だろうと思った。

最初に「ジェレミー・トーマス提供」と出てきて、ちょっと不安になった。大島渚の『戦場のメリー・クリスマス』やベルトルッチの『ラスト・エンペラー』の昔から、北野武の『BROTHER』や三池崇の『一命』まで、鬼才監督に話題豊富なテーマを撮らせ、なぜか中身の薄い映画になってしまうことにかけては、天才的なプロデューサーだからだ。

映画は、ユングがフロイトの教えを実践してゆくうちに患者ザビーナと関係ができてしまい、フロイトとも仲たがいしてしまうというもの。クローネンバーグがユングの愛人とのエピソードを描き、それにフロイトが絡むというから、まさに「話題豊富」だ。

しかし結果は、本当にクローネンバーグが監督したのかと思うほど、ある意味でアカデミックで文学的だった。冒頭の、キーラ・ナイトレイ演じる精神病患者ザビーナが、チューリッヒの病院に運び込まれるシーンから、風光明媚なチューリッヒとウィーンで、物語が進展してゆく。史実に忠実なせいか、いかにも折り目正しい歴史劇という感じで、狂気のドラマではない。

せめてユング演じるマイケル・ファスベンダーがザビーナと一線を越えるシーンくらいもっとスキャンダラスにして欲しかったが、お尻をペンペンと叩いても、ずいぶん上品だ。

クローネンバーグだけに、異常な愛とかバイオレンスとかを期待してせいか、端正な映像にはぐらさされたような気がしているうちに、いつのまにか映画は終わってしまった。

ユングやフロイトよりも、キーラ・ナイトレイの思い詰めた表情と、フロイトからユングに送り込まれる快楽主義者を演じるヴァンサン・カッセルの世捨て人のような雰囲気が妙に印象に残る映画だった。

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