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2012年9月 6日 (木)

変わりゆくベネチア国際映画祭:その(6)アサイヤスの新境地

用事で既にベネチアを離れたが、しばらく映画祭について続けたい。コンペで個人的に一番気に入ったのが、フランスのオリヴィエ・アサイヤス監督の「5月の後に」Apres maiだ。「5月」はもちろん1968年のフランスの5月革命のことで、この映画は1971年の高校闘争から始まる。学校を壊したりして逃げ回り、イタリアに行くが、理想郷はどこにもない。

主人公の最初の恋人はイギリスに行って、ヤクにはまり、2人目の恋人は革命のための仕事に熱中する。友人はアメリカ人女性とインドに行ってしまう。主人公はデッサンを描きながら映画制作にも参加し、それを少しずつ仕事にして行く。

ある意味でたわいないエピソードの積み重ねだが、その一つ一つの映像が痛みを伴う何かに貫かれていて、見ていて心が騒いだ。とりわけ、夏の光の中で若者たちがそれぞれの道を模索する姿が心に焼き付けられた。おそらく『カルロス』を撮った後に監督は、自伝的な内容を撮りたくなったのだろう。「革命に遅れてきた世代」が、長い間どうしても言いたかったことを映画にしたように見えた。

ミア・ハンセン=ラヴの「若き日の恋」(来年公開が決定!)の主役を務めたローラ・クレトンを始めとして、若い俳優たちの表情がいい。

コンペの北野武『アウトレイジ ビヨンド』は2度目だが、公式上映で見た。『アウトレイジ』と同じく暴力満載だが、今回はそれをあまり視覚的に見せない。それよりもやくざたちをオーバーにコミカルに描き、たけし演じる大友の静かな怒りを表現しているように思えた。最後の2つの殺人のシーンにそれが象徴的に表れているように思う。映像で見せない分、音の表現が際立っている。

その直後に同じくコンペのキム・ギドクの「慈悲」Pietaを見ると、その粗雑な映像と作為の強さについていくのが難しかった。借金取りのヤクザとして暮らす男のもとに、かつて自分を捨てた母親が突然現れる。次第に仲良くなってゆき、聖書の母子像ような象徴的な物語に近づく。途中で出てしまったが、その直後に意外な展開があったとのことで、やはり映画は最後まで見ないとわからない。

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