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2012年9月 7日 (金)

変わりゆくベネチア国際映画祭:その(7)終わりの4本

ベネチア最後の日は4本を見た。コンペのヴァレリア・サルミエント監督「ウェリントン線」Linhas de Wellingtonは、昨年亡くなったラウル・ルイスの企画を、編集を担当してきたパートナーが監督したもので、ナポレオンのポルトガル進軍に対して、イギリス兵とポルトガル兵が戦う様子を描いた歴史劇。

10月公開のラウル・ルイス監督『ミステリーズ 運命のリスボン』に似たタッチの大河ドラマで、大勢の登場人物が出てきては消えてゆく。ミシェル・ピコリ、カトリーヌ・ドヌーヴ、イザベル・ユペールが一度に出るシーンや、マチュー・アマルリック、エマニュエル・プポー、キアラ・マストロヤンニのシーンなどのお楽しみも。ただしルイスのように、視覚的にめまいを感じさせるような有難味はない。

オリゾンテ部門の若松孝二監督『千年の愉楽』は、個人的には前回の三島由紀夫の映画よりずっといいと思った。中上健二の土俗的な紀州の世界が的確に表現されているし、撮影された路地の雰囲気も良かった。公式上映で見たが、午前中の上映のせいか、観客が少なかったのが残念。

監督週間のヴィンツェンツォ・マッラ監督の「三つ揃い」Il gamelloは、南イタリアの刑務所の中を描いたドキュメンタリー。刑務所といっても部屋で料理もできるし、好きな音楽も聞けるのだが、囚人たちのストレスは相当だ。カメラは囚人たちに寄り添ってその毎日を淡々と描く。見ているうちにだんだん感情移入してしまった力作。

そして、コンペのハーモニー・コリン監督「スプリング・ブレイカー」には、何と言う言葉がふさわしいだろうか。4人組の女の子たちが海辺のパーティに出かける映画だが、ミュージックビデオのような映像がえんえんと続くだけなのに、何ともいえない魅力がある。これをコンペに入れるとはなかなかだと思った。

ディレクターがアルベルト・バルベラに変わった今年のコンペは、作品数こそ18本と少なかったが、なかなかバラエティに富んだ力作が揃ったのではないか。


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