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2012年9月19日 (水)

またまた渋いフランス映画の傑作を見た

『マリー・アントワネットに別れをつげて』に続いて、フランス映画で渋いがなかなかの傑作を見た。12月15日に公開されるジャンニ・アメリオ監督の『最初の人間』だ。アメリオは『家の鍵』などで知られるイタリアの監督だが、これは仏伊合作のフランス語作品。

原作はカミュの未完の遺作だという。物語は、功成り名遂げた作家が、生まれ故郷のアルジェリアを訪れて、母と話しながら少年時代を思い出すというもの。

それ以上に何が起こるわけでもない。しかし、その映像は鮮烈で、故郷を訪ねた中年の男を襲う孤独や焦燥は限りなく強い。

冒頭の、父親の墓をブルゴーニュで探すシーンで、そのスタイルは明確だ。作家や案内人だけがくっきりと写り、まわりの風景はボケて見え、遠くで鳥の声や子供の声がする。ジャンニ・アメリオはこのような孤独の表現が格別にうまい。

アルジェに着き、大学で講演会をするが、大騒ぎになる。結局母親には翌日に会う。思い出す少年の頃の若い母(マヤ・サンサ)や、叔父、祖母、そして学問を続けるよう祖父を説得してくれた先生(ドィニ・ポダリデス)。今もこんな風景があるのかと思うくらい、ロケの撮影が見事だ。年老いた叔父や友人、先生に会いに行く主人公。

描かれるのは、植民地で育ってフランスで有名になった自分の孤独感。100年を越す植民地時代の後にフランスに戦争を起こしたアルジェリアの苦悩を考えたら、最近の中国の反日運動なんて児戯に等しい、と思う。

私がこの映画の主人公と同じくらい年の中年ということもあってか、その行動の一つ一つが深く心に刻まれた。あんな風に優しくなれたら。

そういえば、プレス資料で若い頃の母親役を好演したマヤ・サンサへの言及がなかったのは残念。上映館の岩波ホールは、彼女が出た『輝ける青春』も『やがて来たる者へ』も公開した場所なのに。ついでに、農夫役が印象的なジャン=フランソワ・ステヴナンは、日本では未公開だが監督作品が数本あったはず。日仏学院で見たが、なかなかの演出力だった。

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