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2012年9月 5日 (水)

変わりゆくベネチア国際映画祭:その(5)テレンス・マリックの失敗など

きょうは苦手だった2本について語りたい。まず、本当に嫌いだと思ったのは、テレンス・マリックの「驚きへ」To the wonderだ。『ツリー・オブ・ライフ』で退屈な哲学を語ってしまったテレンス・マリックは、それが評価されたことでとうとう本当に好き放題のことをしてしまった感じ。

パリで知り合ったアメリカ人男性(ベン・アフレック)とフランス人女性(オルガ・クリレンコ)。彼らは女性の連れ子の娘を連れてアメリカに住むが、どこかうまくいかない。映画はこの2人がくっついたり離れたりするさまを、手持ちカメラでえんえんと追いかける。時々挿入されるフランスやアメリカの「美しい」風景。これが2時間続く。

監督の「愛」や「美」の美学が語られるが、いかにも頭でっかちで退屈だ。後半、アルヴォー・ぺルトの音楽が出てきた時は笑ってしまった。おおむね映画でペルトとサティの音楽が出てきたら要注意、というのは私の持論。

もう1本は、『未来を生きる君たちへ』のスザンネ・ビア監督「愛があれば」All I need is Love。こちらは逆によく練られた脚本のメロドラマ。中年の女性が、娘の結婚を機会に人生を考え直し、浮気をした夫から離れて理想の男性を見つけて第2の人生を歩み出すというもの。娘の結婚式の舞台が南イタリアのアマルフィ海岸で、女性の新しい人生もそこで始まるという、いかにも万人向けの題材だ。デンマーク映画だが、世界に売るためにはこういう映画が一番という見本のような作品か。

苦手な映画を2本見て疲れたので、午後は建築ビエンナーレに出かけた。まず国別の金獅子賞を取った日本館を見る。震災の後の「みんなの家」がテーマで、大きな震災の写真を背景に、手作り感溢れる建物の模型が並んでいた。これを見た時は何とも思わなかったが、そのほかの国別パビリオンを見るとずいぶん平板で、日本館は際立っていたのがわかる。

ただし国別パビリオンは全体に低調で、造船場跡のアルセナーレ会場の方が格段におもしろかったのは例年通り。かっちりした狭い展示空間で建築を見せるのは難しいが、アルセナーレのように天井が高く、部屋の仕切りもなくて石がむき出しの古い建物だと、図面や模型だけではなく、建築そのものの魅力が伝わる演出ができる。

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