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2012年9月22日 (土)

「二人展」のおもしろさ

「二人展」というと、友人同士や夫婦が画廊でやる展覧会、というイメージだが、国立新美術館で10月22日まで開催中の「辰野登恵子 柴田敏雄 与えられた形象」という題名の二人展は、全く違っていた。そもそも作風の違い以前に、絵画と写真という異なるメディアを使う2人の作品が、そこでは不思議な化学反応を起こしていた。

辰野も柴田もそれぞれ絵画と写真の分野では、知られた存在だ。私自身、辰野の形なき形を作る力業のような絵画は1980年代から見ていたし、柴田の写真は数年前の東京都写真美術館の個展でわかっていたつもりだった。

辰野は抽象の中から、具体的イメージを湧き上がらせようとし、何かが出てきた瞬間をとらえる。柴田は人のいないダムなどの何気ない写真の中から、自然と出てくる抽象的な空気を見せる。その二人の作品が部屋ごとにまとまって交互に出てくると、双方が交じり合ってくる。

柴田の作品の大半は白黒で、辰野は赤や黄、青など派手な色彩を駆使する。その二つを変わりばんこに見ていると、自分の脳髄の奥に触れてゆくような、変な気分になってくる。

途中で、2人の学生時代から70年代の初期作品があったのも良かった。それぞれに最初からあった原初的イメージは、さほど違っていないが、いろいろな試行錯誤がある。そして80年代になってからはスタイルを確立し、今日まで変わっていない。30年間変わらない作品を作り続けられることが、美術作家の最大の証明だとつくづく思う。

辰野は50年、柴田は49年生まれで、東京芸大油画科の同級生。95年に一度だけ画廊で二人展をやったことがあるのみという。異なる作家の作品を組み合わせて見せることで、全く新しい効果を生み出したこの展覧会は、学芸員の力がはっきりと表れている。頭に抽象的な刺激が欲しい人は是非。

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