パリの2本
パリでは、空いた時間に2本だけフランス映画を見ることができた。1本はカンヌに出たレオス・カラックス監督の「ホーリー・モーターズ」Holy Motorsで、もう1本はベネチアのコンペで見損ねたグザビエ・ジャノリ監督の「スーパースター」Superstar。
カラックスの作品は、昔から彼の映画に出ていたドニ・ラヴァンが、高級リムジンに乗ってパリの街で不思議な「仕事」をする一日を描く、一種のファンタジー。筋は無茶苦茶なのだが、どこかフィルムノワールを始めとしていくつもの映画を思い出させるシーンが続き、妙に魅力がある。サマリテーヌ百貨店の廃墟や、最後にいくつものリムジンが車庫に戻るラストなどなんだかぞくぞくしてしまう。カラックス節は健在だ。
「スーパースター」は、ある日平凡な男マルタンが突然地下鉄の中で写真を撮られて、ネット上のスターになるというもの。いかにも今日的な主題で、みんながマルタンを巡って大騒ぎし、テレビの生中継も巻き込んで社会現象になる過程が、なかなかうまく描かれてゆく。後半ちょっと調子が落ちるし、終わり方が甘いのが残念だが、日本でもある程度受けるだろう。
実は今回、「論文のようなもの」を書くためにあるフランス人に初めて電話をして、その後質問をメールで送り、電話インタビューをした。その時に「どんな方かとブログを読んだらおもしろかった」と言われた。また、別の旧知のフランス人と会ったら、「ベネチアで見た『5月の後で』は、いかがでした。フェイスブックで良かったと書かれていたので」と言われた。ネットを通じて、誰もが瞬時に情報を得ることができることは、便利なようで恐ろしい。このブログも気をつけなければと、映画を見ながらヒヤヒヤした。
そういえば、フランスのインテリの大半は反フェイスブックだと聞いた。昔から「アメリカ化」americaniserを嫌うフランス人らしい。私もめったに書かないが、友人の動向がわかったり、知らなかった情報も手に入るので、時々のぞく。でも書く内容には気をつけないと。
ともあれ、今回のベネチアとパリで、10日間で24本の映画を見た。日本にいる時は、1日に1本以上見ることは物理的にも精神的にも難しいが、外国だと非日常の空間なので、何となくできてしまう。そのうえ、毎晩さまざまな友人たちと食事をし、酒を飲んだ。パリだと昼まですべて会食だ。我ながらよく胃が持つなと思うが、これも非日常だからできること。これだから、外国に行くのは止められない。
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