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2012年10月24日 (水)

それでも東京国際映画祭を見捨てない:その(5)

会期も半ばになると、例年通り関係者の文句がたまってくる。関係者の居場所がない、コンペのプレス上映を同じ時間帯に2本やるのはおかしい、プレス上映の前に記者会見をやるのはどうか、等々。私は昨日も3本を見た。

見たのはすべてコンペ作品で、良かった順に松江哲明監督の『フラッシュバックメモリーズ 3D』、カン・イグァン監督の『未熟な犯罪者』、奥原浩志監督の『黒い四角』。

『フラッシュバック』は交通事故で記憶が消えてしまった音楽家GOMAの過去と現在をたどるドキュメンタリー。「昔の写真を見てもなぜ笑っているのかわからない」というGOMAの最近の演奏シーンを手前に3Dで見せながら、後ろに過去の写真、内外での演奏シーン、日記、事故後に描いた絵画などを見せてゆく。

文字、写真、動画、絵画を3Dに組み合わせるというこれまでにない手法が、新しい美学を生み出している。まるでゴダールを見ているような鮮やかさと知的刺激がある。終止、真ん中で両手の指を奇妙に動かしながら、ディジュリドゥという長い筒のようなアボリジニの楽器を鳴らすGOMAは、ほとんど宗教家だ。

後ろに写る曼荼羅のような絵が彼が事故後に描いたものだと知った時のショック。首都高での交通事故をアニメで見せる繊細さ。わずかに写るテレビの大震災の映像。そしてラストのコンサート。同じような音楽が無限に繰り返されるなかで、スピリチュアルな雰囲気に圧倒されて、完全にノックアウトされてしまった。

『未熟な犯罪者』は、本当に未熟な若い母親とその息子のダメさ加減をこれでもかこれでもか、と見せる。演出はそれなりに成功しているが、見ていてとりわけ母親に腹が立つ。何度も何度もだらしない場面の繰り返し。レベルの高い韓国映画が年に十本以上公開されているなかで、なぜこの映画がコンペ、と思ってしまう。

『黒い四角』は、イタリア映画『ニーナ』に似た不思議ちゃん映画だが、現代中国を描いているうちに、途中から日中戦争ものになる。全体に必然性が弱く、特に日中戦争になると描き方が安易すぎるように見える。丁寧に撮影された映画だが、それが時おり思わせぶりに見えてしまう。144分もあるが、前半を中心に半分くらいの長さの方が良かったのではないか。

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