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2012年10月16日 (火)

日本人は「残酷」か

四半世紀ぶりに見たセシル・B・デミルの『チート』(1915)が予想以上におもしろかった。かつて見た時は、同時期のグリフィスに比べて平板な気がしたが、今回見直して、明暗のくっきりした画面と照明の効果、そして何より現代的な「金と女」のテーマに息を飲んだ。

この作品は日本初の国際スター、早川雪洲の実質上のデビュー作で、この映画以降、早川はアメリカ人女性のマチネアイドルとなる。確かに無表情の白い顔で何を考えているかわからない不敵な微笑を浮かべるさまは、魅惑的とも言える。

問題はこの映画が当時日本では日本人の残酷さを強調する映画として批判され、早川は「国辱俳優」と非難されたということだ。実際、1918年の再公開版では、日本人という設定が、「ビルマの象牙王ハカ・アラカウ」に変わっている。

確かに焼きごてを無理やり女性の肩に「じゅっ」と当てるシーンは、ちょっと普通じゃない。だからこそアメリカ人女性がサディズム的に魅力を感じたのは間違いないが、「日本人は残酷」というイメージはその時からもうあったのだろうか。

その後で言えば、第二次世界大戦中に中国人に対する残虐な行為が写真や映画で広まったし、これは現在中国の反日感情の原点だろう。あるいは神風特攻隊も別の意味で残酷な行為だ。今では「カミカゼ」は欧米語になり、アラブ人の自縛テロなどを指すくらいだ。

その後だと、1970年の三島の割腹自殺がある。あるいは「ハラキリ」は、『切腹』(1962)から『一命』(2011)まで、特に海外に出る日本映画に何度も取り上げられている。

しかし、1915年の『チート』の時点で、どの程度残酷なイメージが広まっていたのかは疑問だ。アメリカの移民法改正(いわゆる排日移民法)は1924年。もちろんそれ以前に多くの日本人移民がいたからだが、彼らが残酷なイメージを作ったとは考えにくい。あるいはヨーロッパでも19世紀末からあった、黄禍論Yellow Perilの作りだしたイメージか。これは今後の課題かな。

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