普通のフランス映画の公開が続く
最近、凡庸な普通のフランス映画がどんどん公開される。現在ヒット中の『最強のふたり』がそうだし、11月3日公開の『みんなで一緒に暮らしたら』もそうだ。12月22日公開の『シェフ!~三ツ星レストランの舞台裏へようこそ』もそんな1本。
ジャン・レノが主人公で、三ツ星レストランの有名シェフを演じるというだけで「娯楽大作」感がある。星を失いそうになった主人公が、天才的な若者を見つけ出して後を譲るという話だが、ずいぶんコテコテの仕上げだ。昔だったら「三ツ星」の意味も日本では通じなかったこともあって、まず公開されない類いの純フランス的コメディー。
出てくる登場人物はみんなカリカチュアみたいだし、女性はみんな薄っぺらい美人ばかり。ジャン・レノの娘とのやり取りや、若いシェフの恋人との会話など、笑いがちょっとくどい。それでも試写会では受けていたので、今の日本では当たるのかもしれない。
『最強のふたり』と言えば、今年の東京国際映画祭(ちなみにこれをTIFFティフと呼ぶのは気になる。世界的にはトロント国際映画祭のことだから)のオープニングやセレモニーの挨拶でこの映画について触れる人が多かったのは恥ずかしかった。つまり、昨年グランプリを取ってから世界中でヒットしたのは、東京国際のおかげといわんばかりなのだ。
まずこの映画がコンペに入ること自体が恥ずかしい。カンヌやベルリンなどではコンペはあり得ない、アメリカ映画をまねて作られた娯楽作品だ。それが何かの間違いで賞を取ってしまったことで、東京国際の悪い評判はさらに世界に広まる。その恥を上塗りするように、今回の映画祭でみんながこのことを快挙のように話す。何という勘違いだろうか。
『最強のふたり』は、東京国際でやらなくても、各地でヒットするような映画だ。そのように計算して作られている。国際映画祭でやるものではない。
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