『ファースト・ポジション』に不覚の涙
ドキュメンタリーは、フレデリック・ワイズマンのような天才でなくても、抜群に興味深い対象を丹念に追いかければ、相当おもしろいものになる。『ミリキタニの猫』や『ハーブ&ドロシー』がそうだった。
12月公開の『ファースト・ポジション』もそんな1本。この映画には、前述の2本と違って変人が出てくるわけではない。カメラが追うのは、ユース・アメリカ・グランプリというバレエ・コンクールを目指す6人の若者たちだ。出身も境遇も年齢もさまざまな6人が、尋常ではない努力を重ねる姿を見ているうちに、だんだん画面から目が離せなくなってくる。
実を言うと、個人的にはバレエに興味はないし、バレエ・ファンは気持ち悪いという偏見さえあるが、ある映画評論家の方に「おもしろいわよ」と言われて見に行った次第。
まず6人の生活が簡単に紹介された後、それぞれのレッスン風景が写る。それから各地での予選。このあたりから、「うまくいきますように」とまるで彼らの親にでもなったかのような気分になった。そしてニューヨークのファイナル。ほとんどドキドキしてしまう。そして彼らがメダルを取り、ロンドンやニューヨークのバレエ学校の奨学金を得ると、不覚にも涙が出た。
とりわけ気になったのが、コロンビア出身のジョアン。時おりコロンビアの両親に電話をし、励まされる姿は普通の少年だ。予選を通過して、コロンビアに一時帰国する時も、カメラは追いかける。山の中のカラフルな家で、母の料理を嬉しそうに食べるジョアン。
もう1人目が離せなかったのが、アフリカのシエラレオネの難民だったミケーラ。アメリカの養父母のもとに暮らす彼女には、肩のあたりに戦争の傷跡による斑点がある。ファイナルの直前に足が痛くなって薬を塗るシーンでは、祈るような気持ちになった。
各地でのロケも丹念に撮られているし、両親やコーチの姿もそれぞれ異なっていて興味深い。ファイナルの後のの各自の生活が撮られているのも良かった。がんばれ、ジョアン。
ある意味普通のドキュメンタリーだが、評論家にも一般の観客にも訴えかける作りになっている。これは当たると思う。
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