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2012年10月22日 (月)

それでも東京国際映画祭を見捨てない:その(3)

昨日は4本も見た。一般上映でコンペの『ハンナ・アーレント』、プレス上映で「アジアの風」の『ゴールデン・スランバーズ』、プレス上映でワールド・シネマの『木曜から日曜まで』、一般上映で「日本映画・ある視点」の『何かが壁を越えてくる』。ああ疲れた。

『ハンナ・アーレント』は、ドイツ系哲学者のニューヨークの日々を描いたもの。『ニューヨーカー』にアイヒマン裁判をめぐる文章を連載し、ナチを弁護したと非難の嵐に会う。友人や同僚に嫌われても、自らが考えたことを決して曲げない女性の強さに、深く心を動かされた。

部屋の中をゆるやかに流れるカメラに、ハンナの強い意志を示す表情が写り、窓の外の都会や田舎の風景、学生時代のハイデッガーとの思い出が流れてゆく。後でわかったが、この流麗なカメラはキャロリーヌ・シャンプチエだった。文章を書くとはこういうことか、本物のインテリとはこういう人か、と考えさせられた1本。

『ゴールデン・スランバーズ』は、1975年にポルポトによって捨てられたカンボジアの映画を、人々の思い出やポスター、歌などから再現するドキュメンタリー。1960年から1975年までに、カンボジアでは400本の映画が作られたが、現在は30本しか残っていない。しかし、人々の記憶の中には鮮明に残っている。生き残った監督、女優、プロデューサー、そして映画ファンが語る当時の映画の数々。

後半、プロデューサーがパリに先に行った妻に3年後に会いに行くと既に恋人がいた話をする時、カメラは顔から移動し、地面に落ちた花びらを写す。「海馬」という映画の内容を窓をバックに細かく語りだす監督の姿は、次第に黒い影になり、どこからか映画が浮かびそうだった。

『木曜から日曜まで』は、4人家族の4日間のドライブを描いたチリの映画だが、強烈な2本を見た後のせいか、私にはピンとこなかった。何となく夫婦の不和を子供たちが感じてゆくのは、わかったけれど。

『何かが壁を越えてくる』は、知り合いの榎本憲男監督の第2作で、今回は35分の短編。若い3人の男女のドライブを描いたものだが、女性たちの心理を丹念に追ってゆくカメラがいい。明らかに映画的記憶の豊富な作品だが、それだけでここまで撮れるのかと思った。撮影はわずか2日半という。

この作品と同時に上映された篠崎誠監督の『あれから』も見ようと思っていたが、次の予定のために時間切れに。

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