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2012年11月 3日 (土)

カルト集団のサスペンス映画とは

試写で見る作品を選ぶ時、監督や俳優やプロデューサーに取っ掛かりがない場合、受賞歴に頼ることが多い。左右に棕櫚のマークで「〇〇国際映画祭新人賞」などと並んでいると、つい見に行ってしまう。来年2月に公開する『マーサ、あるいはマーシー・メイ』もそんな感じで選んだ。

これは昨年のカンヌで「若者の視点賞」(そんな賞あったか)とかサンダンスでドラマ部門監督賞など6つ棕櫚マークがあった。チラシは監督の「これはある女性がマインド・コントロールから逃れようと闘う最初の2週間の物語です」という言葉が書かれていた。

私はてっきりオーム教のような集団を逃れた女性が立ち直る過程を描いたシリアスなものかと思ったらだいぶ違う。バカンス中の姉夫婦のもとに逃げ込んだ妹マーサは、どこかおかしい。絶えず2年間のカルト集団の記憶が蘇り、次第に姉夫婦を批判してゆく。

カルト集団は別に宗教色はなく、現代社会から離脱して原始的な自給自足を目指す若者の集まりだ。しかしいくつもの掟があって、男性が先に食事をしたり、新しく加わった女性はまずボスに後ろから犯さたりする。

マーサのカルトの記憶はどちらかと言うとホラーのように蘇る。そこに乱交のシーンがあったりして、エロチックな要素まで交じってくる。なによりマーサ役のエリザベス・オルセンがエロい。「マインド・コントロールから逃れようと闘う」の割には、ずいぶんB級映画めいてきて、この匙加減が巧みだった。

マーサが姉の夫に「金や成功を求めるのが模範的な生き方なの」と批判したり、姉に「ひどい母親になるわよ」と言ったりするが、それが妙に説得力がある。カルト集団のやっていることは滅茶苦茶だが、現代社会からドロップアウトした若者たちの言い分には正しい部分がある。そういえば、集団の男性の一人はイヴァン・イリイチを読んでいた。懐かしいなあ。

ラストにかけて、サスペンスがどんどん加速される。このあたりの構成が実にうまい。

題名の『マーサ、あるいはマーシー・メイ』のマーシー・メイは集団で付けられた名前。原題はMartha Marcy May Marleneで、最後のマルレーンは実はラストの手前で大きな意味がある。これも日本語題に入れて欲しかったが、長すぎか。

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