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2012年11月13日 (火)

才気煥発のウェス・アンダーソンに脱帽

いやいや、驚いた。来年2月8日に公開されるウェス・アンダーソンの新作『ムーンライズ・キングダム』のことだ。「才気煥発」とは、このような監督のためにある。前衛的でキッチュでチャーミングなメロドラマと言ったらいいのか。

この監督は『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』(01)の時から、変なテイストが気になっていた。それは『ライフ・アクアテッィク』(05)に至って変人の域に達したかと思ったら、去年見た『ファンタスティック・Mr.FOX』では、人形アニメで抱腹絶倒の世界を見せてくれた。

今度もちょっとアニメを思わせるくらい、映像を自由自在に操る。最初に部屋の中でカメラが自由に前後左右に動いたかと思うと美少女が写り、カメラが引いてそこが海に面した邸宅だとわかる。

物語はニューイングランド沖の小さな島に住むその少女スージーが、ボーイスカウトのサムと恋に落ち、大人たちが大慌てで捜索するというたわいないもの。しかしカメラは生きているようにあちこちに動き、編集も大胆で、音楽も奇想天外。まるで遊んでいるように、どの場面も凝りに凝っている。

そのうえ、大人たちが抜群におかしい。警部役のブルース・ウィリスやボーイスカウトの隊長役のエドワード・ノートンはそうと気づかないくらいの間抜けぶりを見せるし、スージーの両親を演じるビル・マーレイとフランシス・マクドナルドは何とも自分勝手で愛すべき存在だ。そして圧巻は、福祉局職員役のティルダ・スウィントン。青いマントのような服を着て、まるでスーパーマンのように颯爽と現れ、正義を語る。いやはや、画面のどこを見たらいいのか、わからなくなった。

設定は1965年ということが途中でわかるが、スージーとサムが持ち出すレコード盤用の安っぽいステレオ再生機や、アライグマのワッペンのついたボーイスカウトのユニフォーム、冒頭から流れるベンジャミン・ブリテンの音楽など、何とも懐かしい、楽しい気分にさせてくれる。

映画にはまだまだいっぱい可能性が残されているのだと、妙に感慨深くなった。もう一度見たい。

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