期待を裏切られながらおもしろかった『北のカナリア』たち
吉永小百合主演の『北のカナリアたち』を日曜夕方に丸の内東映で見た。まわりは自分より年上の方ばかりで、平均年齢はたぶん65歳を超えているだろう。隣の夫婦は『あなたへ』に失望した話をしていた。同じ客層かもしれない。
私は吉永小百合に何の思い入れもない。見に行ったのは、阪本順治監督ということと、見た友人の間で評価が分かれているのがおもしろいと思ったからだ。
何の予備知識もないまま見たが、広告を見て、『二十四の瞳』を北海道の雪の中でやるのかと思っていた。そうしたら、定年になった吉永演じる元先生が、順番に教え子を訪ねて回るので、おやこれは『舞踏会の手帖』かと思った。
ところが「隠された真実」が次々に出てきて、サスペンス仕立てになってくる。そのうえ吉永が不倫をしていた事実まで飛び出し、いかにも東映らしい安っぽさまで出てくる。
ところが見ていると、中盤くらいから盛り上がってきた。20年前の学校のシーンが抜群にいい。とりわけ変な金切り声を挙げた少年にあわせてロシア民謡の「カリンカ」を歌い出すシーンなんて抜群だ。撮影も細やかで、教室の内と外、雪の街や海岸をクロースアップとロングでテンポよく捉える。
そして大人になった教え子たちがいい。とりわけ犯罪を犯す森山未来が抜群だが、宮崎あおい、満島ひかり、小池栄子、勝地涼、松田龍平が演じる6人のそれぞれのキャラクターが、くっきりと見えてくる。
その反面、吉永の父を演じる里見浩太朗、夫役の柴田恭兵、愛人役の仲村トオルの部分が弱い。俳優というより脚本の問題で、詰め込み過ぎて無理がある。
詰め込み過ぎと言えば、音楽も冒頭から流し過ぎだ。あの撮影、編集、音響なら、もっと絞って良かった。木村大作の撮影は見事だが、夕日、朝日、雪の景色などいわゆる「絶景」が多すぎる。もっと抑えて使えば効果があるのに。
そんな文句を言いながらも、終わりの生徒との再会のシーンでは涙を押さえられなかった。最近、涙もろいのは年のせいか。
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コメント
森山未来の上手さに脱帽です。こんなに上手い人だったのですね。彼の出演作は初めて観ました。ラスト分校での再会シーンの彼の慟哭に、心が震えました。宮崎あおいをはじめとする分校の仲間たちもとても良かったのですが、それにひきかえベテラン里見浩太郎の演技は、テレビの時代劇か舞台の芝居のようにコテコテで浮いています。吉永小百合のキスシーンと、ラスト里見と吉永の語らうシーンはないほうがいいと思いました。若手の演技がとても良かったので、ちょっと残念です。
投稿: sona | 2012年11月12日 (月) 23時24分