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2012年11月 5日 (月)

「美術にぶるっ!」としたか

東京国立近代美術館60周年特別展「美術にぶるっ!」を見た。何という身も蓋もない展覧会名だろう。副題は「ベストコレクション 日本近代美術の100年」。東近美の常設はいつも見ているが、全館所蔵品展示というのに惹かれて見に行った。

確かに教科書にも載っているような代表作が並ぶ。最初は「ハイライト」として、重要文化財ばかり。川合玉堂の屏風絵《行く春》や横山大観の絵巻《生々流転》など、日本画の方がずっとおもしろい。しかし《生々流転》は途中までしか見せていなくて残念。あの広さなら全部広げて見せられるのに。

それから「はじめの一歩」と題して、1952年に東近美が京橋の今のフィルムセンターの場所にできた時の所蔵品が並ぶ。ここでもまた日本画が強い。土田麦僊の《湯女》に惑わされた。それから洋画の始まりで、人や風景が並ぶがどうもつまらない。

やはり戦争画はおもしろかった。美術とプロパガンダを無理に合わせようとした、藤田嗣治や宮本三郎らの試みは痛々しい。ぜひ戦争画だけの展覧会を見たい。

次に写真が来て、ようやく日本画だけのセクション。上村松園の《母子》とか鏑木清方の《三遊亭円朝像》とか見ているだけで楽しくなる。しかしこのセクションは20点たらずで少ない。

そうして現代美術が出てきて、次に外国作品が並ぶ。全体に小品が多いが、驚いたのは「盛田良子コレクション」と銘打った数点。クレーの《山への衝動》など一流の作品ばかりだ。このコレクターは何者かと思ったが、ネットで調べるとソニーの創業者盛田昭夫氏の夫人だった。

4階から2階まで降りてきて、何か見足りない気がしていたら、1階は第2部「実験場1950s」という。ここは所蔵品展ではなくて、各地の美術館から借りてきたテーマ展だった。原爆に始まっておどろおどろしい作品が並び、それまでの優雅な気分は吹っ飛ぶ。

第2部は重すぎて駆け足で見た。北朝鮮への帰国運動のニュース映像が妙に記憶に残る。異物感の残る展覧会なので出直したい。

どうせなら1階まで所蔵品展にすれば良かったのに。あるいはこの美術館はいつも所蔵品だけを見せてもいいかもしれない。1万2千点の所蔵品を並べ替えていれば十分おもしろい。同じ組織になったのだから、企画展は国立新美術館に任せればと強く思った。

さて「ぶるっ」としたか。確かに、いくつかの日本画には戦慄が走った。もっと日本画を見たかった。特に《生々流転》は全部見たい。

1月16日まで開催。

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