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2012年11月 7日 (水)

見世物小屋の記憶

「見世物小屋」というのは妙に気にかかる。昔、九州の田舎町で祭の夜に見た剣劇芝居やお化け屋敷。大学生の頃、筥崎宮の「放生会」(ほうじょうや)で見たヘビ女。そんな記憶を求めて、12月8日公開の『ニッポンの、みせものやさん』を見に行った。

これは奥谷洋一郎という監督が、現在も見世物小屋を続ける唯一の一座「大寅興行社」を10年間追いかけたドキュメンタリー。九州や北海道への旅興行もあれば、新宿花園神社での公演もある。

監督も時々出てくる。設営を手伝ったりしながら、芸人たちの話を聞く。「昔は1つの祭に見世物小屋が5、6軒立って、緊張感があった。全国では30以上の一座があって、いろいろな場所で数年ぶりに会って楽しかった」「テレビ屋はダメ、見世物屋より嘘つき」。時おり監督の朴訥なナレーションがはいる。

前半は「ゆうこ姉さん」という人の語り。父親の見世物小屋を手伝っているうちに知り合いが増えてこの道に入ったという。父親の名前が大野寅次郎と言っていたから、「大寅興行社」はその名前から取ったのだろう。後半は、昔「こまさ興行部」を率いていたが、今は縁日の子供向け射的ゲームをやっている「むねおさん」に焦点が当たる。彼はなぜか見世物小屋の模型を竹細工で作っている。

驚いたのは、ヘビが何匹も入った段ボールが宅配便で届いたこと。最近入ったヘビ女をやる若い「小雪さん」は、生きているヘビの頭を食いちぎり、生き血を吸う。あるいは鼻と口の間に鎖を通す。60歳を越す火吹き女の「おみねさん」は、蝋燭に火をつけて蠟をたっぷり口の中に垂らした後に、大きな火を噴く。この一座ではないが、北海道の一座のモーターショーもおもしろかった。これは昔木下サーカスで見たことがある。

見世物が終わると、関係者たちはみんな味のある、いい笑顔をしている。それに比べると見世物小屋に入っていた現代の観客が、本当に薄っぺらに見えてきた。濃密な昭和の人間的空間が、今まさに消滅しつつある。縁日の夜にいくつもの小屋が並び、そのまわりを露店が取り囲む独特の風景は、いつまで続くのか。もうすぐ新宿花園神社の酉の市で大寅興行社の見世物小屋が立つというから、今のうちに見ておきたい。

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