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2012年11月 6日 (火)

「違う、違う」と言いながら見る『東京家族』

来年の1月19日公開の山田洋次監督『東京家族』を見た。恐れ多くも『東京物語』のリメイクだ。まずプレスを見て、父役の笠智衆が橋爪功になっているのに愕然とし、長男の医者の佐分利信(ではなくて山村聡に)が西村雅彦になっているのに至っては、悶絶しそうになった。違う、違う。

映画が始まると、大胆にも昔の松竹マークが出てくる。最初に映る風景は尾道ではなく、東京の郊外の汚い風景。ああ違う。そして長男の嫁が夏川結衣で、やってくる両親のために部屋を取られた息子が「じゃあ、勉強しなくっていいんだね」と、オリジナルと同じセリフを吐く。違う。

現代にあわせて相当翻案してあるので同じセリフは多いわけではないが、出てくるたびに、違う、と思う。「さればとて、墓にふとんも着せられずか」とつぶやく林家正蔵に、妙に腹が立つ。

ところが両親がやってきて、母親役に吉行和子の肩の力の抜けた演技を見ているうちに、だんだんと怒りが収まってくる。最初はヒゲ面がわざとらしいと思った橋爪功も、だんだん良くなってくる。特に後半、旧友役の小林稔侍と小料理屋(女将は風吹ジュン)でクダを巻くあたりは抜群だ。「おまえと飲むのもこれが最後だから飲め」「客の言うことが聞けんか、この女は」。

そして次男役の妻夫木聡が、母親に恋人(蒼井優)を紹介するあたりから、泣けてしょうがない。翌日、このうえなく嬉しそうに帰ってきた母が倒れ、急転直下。みんなが集まり、泣く。

母が亡くなり、瀬戸内海の島に帰る橋爪についてゆく妻夫木と蒼井。島で人々が泣き、葬式で泣く。そうして橋爪と蒼井のラストの会話を聞いて、泣く。

見終わって、これは『東京物語』ではなく、山田洋次の映画だったという当たり前のことに気付く。そう思えば怒る理由もない。個人的には、西村雅彦の演技だけは腑に落ちなかった。

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佐分利信ではなく山村聡では?

投稿: | 2012年11月 8日 (木) 14時31分

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