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2012年12月 3日 (月)

おもしろくて退屈な『悪の経典』

ようやく三池崇史監督の『悪の経典』を見た。もちろんおもしろかったが、ちょっと期待外れでもあった。何が期待外れかというと、後半の殺戮シーンが同じ調子で退屈してしまったからだ。

三池崇史監督は、今の日本で最高の職人監督だと思う。『ゼブラーマン』や『ヤッターマン』から『愛と誠』や『忍たま乱太郎』まで、とにかくどんなジャンルでも、遮二無二見て楽しい作品に仕上げる。

そのうえ、この監督にはモラルというものがない。どんなに残酷でも陰惨でも、とにかく映像でたっぷり見せてくれる。その分、「自分が伝えたいもの」がない、あるいは見せない監督なので、脚本が良くなくてもそのまま映像にしてしまい、結果として時々退屈になってしまう。

うまくいった例は『十三人の刺客』で、失敗例が『一命』。今回の『悪の経典』はその中間だろう。前半はいい。いかにも学生に人気のある蓮実先生が、どこか変なところを、少しずつ見せてゆくからだ。だからそこに浮かび上がるいくつもの要因をもっと後半まで入れ込んでほしかった。

例えば冒頭の先生の生い立ちはもう少し説明が欲しかったし、カンニング事件やクレイマーの親にしても、もうひとひねりあってよかった。

それでもこの監督の登場人物の作り方はすばらしい。蓮実先生を演じる伊藤英明の爽やかなイメージが、急にその裏に潜む悪魔に変わる感じは見事だし、同僚の吹越満や山田孝之もいかにも怪しくていい。高校生の染谷将太や二階堂ふみもくっくりと残る。

私は原作を読んでいないが、まず「ハスミ先生」に笑ってしまった。私にとってはあの重彦御大以外に考えにくいし、そのうえ、学生に「ハスミン」と呼ばれているのも同じなので。御大が銃を持って学生を追い回す、という図が妙にピタリとくる。どうでもいい話だけど。

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