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2012年12月 1日 (土)

おもしろくてタメになる『パリの子育て親育て』

林瑞絵著『パリの子育て親育て』を読んだ。この著者とは、『フランス映画どこへ行く ヌーヴェル・ヴァーグから遠く離れて』をこのブログで絶賛したら、向こうから連絡が来て知り合いになった。前著がフランス映画の現状を実に具体的に分析していたので、次はどんな本を出すのか気になっていた。

題名通り、今度はうって変わってプライベートな本だ。フランス映画界に切り込んでいくような勇ましい感じの前著に比べると、拍子抜けするくらい、肩に力が入っていないエッセーだ。

書かれているのは、パリで生まれた娘ミラとの日々だけ。しかしながら読むうちに、日本人とフランス人の違い、日本社会とフランス社会の子供に対する考えの違い、とりわけのフランスの子育て支援の手厚さなどが浮かび上がり、なかなかタメになった。

私は男性だし子供がいないので、日本の子育て支援がどの程度のものか全く知らない。しかしこの本で語られるフランスの支援はすごい。出産前後の検診代や出産費用は無料、7カ月目の約10万円の出産準備金、3歳までの毎月約2万円の手当。第2子、第3子になると額が上がる。さらに母子保護センターでは無料で検診や相談が受けられる。

巻末には子育てをめぐる家族手当が書かれている。4種類の乳幼児受け入れ手当に始まって、家族手当、新学期手当、一人親手当など、とにかく目白押しだ。これはフランスの出生率が2人を超して、アイルランドと並んで欧州一というのも頷ける。

しかしこの本を読む楽しさは、なにより母親と娘の会話にある。「いいじゃん」と母が言うと、3歳の娘は「じゃんと言わないで。可愛くないから」という。あるいは、母が「あんた、ママのいうこと聞かないから、もうぜーんぜん可愛くないわあ」と言うと、娘は「ベッドに小さくうずくまり、「可愛いのに、可愛いのに……」と背中を丸めて泣いてしまった」。

この本には、こうした微笑ましい会話が溢れている。だからおもしろくてタメになる。それにこれまで知らなかった林さんのプライベートな生活を知ることができたのも、楽しかった。パリにはよく行くが、やはり暮らすとなると全く別物だと痛感。

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