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2012年12月29日 (土)

「新聞の映画評」評:『レ・ミゼラブル』

もともとオペラやミュージカルは苦手だ。舞台で「ああ、娘よ」と歌いだされただけで、恥ずかしくて逃げたくなる。その映画版もいくつかの例外を除くと、あまり好きではない。評判がいいので映画『レ・ミゼラブル』を見に行ったが、私にはどこがおもしろいのか、まるでわかならなかった。

まず、ミュージカルなのに全く踊りがなく、顔のクロース・アップばかりだ。パンフレットによると、これはアフレコでなく、全編、撮影現場で俳優が生で歌ったものだという。そのせいで体の動きをなくしたのかもしれないが、せめて踊りがないと、大口を開けて歌う役者のアップをとても見ていられない。

冒頭から、「下を向け」と奴隷たちが歌うシーンのアップが出て、全く興ざめしてしまった。映画を見ている分には生でなくてもいいから、セリフ以外で内容をわからせてほしい。

期待していたセットもよくなかった。というか、アップが多いせいで18世紀のパリがほとんど見えない。たまに大勢のシーンが出てくると、妙に白っぽいCGらしい画面で、当時のパリの猥雑さが抜け落ちている。

なぜ見に行ったかというと、新聞の映画評で絶賛が並んでいたからだ。「日経」で渡辺祥子さんが、「映画ならではの表現を駆使してフルスピードで進むドラマは、感動の涙に浸りきる余裕もないまま、2時間40分が過ぎてしまうのが惜しい」。

「読売」では小梶勝男記者が「苦しみに満ちたバルジャンの一生が報われるラストには胸を打たれた」。見た後に読んだ「朝日」(いつものように他紙を見て1週遅れ)では、北小路隆志氏が「矛盾や対立に満ちた世界の有り様を歌声で綴る本作ならではの達成だろう」。

みなさん、ミュージカルや原作をちゃんと理解して内容を楽しんでおられるようで、19世紀ロマン派の壮大な物語に入り込めなかった私は分が悪そうだ。私が一番おもしろかったのは、ヘレナ・ボナム=カーターとサシャ・バロン・コーエンの悪徳夫婦(特に終盤)だが、これについては誰も触れていない。

有楽町の日劇1で金曜16時50分の回に見たが、20代から50代までの女性を中心に8割近く埋まっていた。私の横の女性は泣いていたので、やはりいい映画かもしれない。実は私はTOHOシネマズのポイントがたまって無料で見たが、それがよくなかったのかな。

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コメント

これ程ミュージカルの完全映画化にこだわるのなら、主要な役者はもっと歌の上手いのを選ぶべきだ。実力に差がありすぎる。エポニーヌとマリウス役の2人の実力に対し、ジャン・バルジャンと警部は歌で演じる事ができていない。そもそもこんなに歌にこだわる必要があるのか?台詞ではいけないのか?歌のシーンはアップが多く、もっと映画的な手法で撮れなかったのか。世間の評判とはうらはらに、何だか中途半端な作品だと思った。心に残ったのは、エポニーヌ役のすばらしさ。その圧倒的な歌唱力でキャラクターの魅力が存分に引き出され、幸せになるコゼットより儚く散るエポニーヌの方が印象に残った。

投稿: sona | 2013年1月 8日 (火) 00時24分

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