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2012年12月 4日 (火)

一気に読む『無理』

奥田英朗という作家は同世代のせいか、描く世界の雰囲気が妙に自分の肌になじむ。そんなわけで『無理』が文庫になっていたので買った。上下巻の長編だが、一気に読む。まさにオビの「ご注意 一気読み必至!」の文句通り。

舞台は合併で生まれた地方都市、ゆめの市。そこで不満だらけの日々を過ごす5人が主人公だ。とにかくいいことは何もない。

県から派遣されて市役所で生活保護に関わる公務員。ひたすら東京の大学に行くことだけを夢見る女子高生。暴走族あがりで老人相手に高額商品を売りつけるセールスマン。スーパーの警備員で、新興宗教に打ち込む中年女性。ヤクザと手を組む市会議員。

女子高生を除いては、相当にヤバい人々ばかり。その女子高生はオタクに拉致されて、その母親と共に監禁される。公務員は売春に手を染め、セールスマンは別れた妻の子供を押し付けられる。警備員はライバルの別の新興宗教によって職を奪われ、市会議員は殺人事件の片棒を担ぐ。本を読み進むにつれて、全員の状況は悪化し、「無理」寸前に至る。

そしてこの5人が少しずつ関わってきて、最後に一つになってクラッシュするというもので、よくできたハリウッド映画を見ているようにおもしろかった。悲劇のはずなのに、笑ってしまう。

しかし、もし映画にしたら、最初に登場人物が出た瞬間ですべてがわかってしまい、あんまりおもしろくない気がする。

小説の中でこんなセリフがあった。「だって国民年金なんか満額納めても、支給されるのは月六万円程度なのね。でも、一人暮らしの老人が生活保護を受ければ最低でも八万円だって。真面目に納めているやつ、馬鹿。やくざなんか、ホームレス集めて、生活保護を申請させて、通ったら半額ピンハネしてるって言うもん」

何とも暗澹たる気分になる。

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