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2012年12月 9日 (日)

昔寝てしまった白黒映画2本

大学の授業の準備で、四半世紀ぶりの白黒映画を2本見た。ロバート・アルドリッチの『キッスで殺せ』(55)とヴィム・ヴェンダースの『都会のアリス』(73)だ。実を言うと前に見た時は、2本とも途中で寝た記憶がある。

昔はよく映画で寝た。ハスミさんの「今すぐ映画館に走れ」みたいな文章にそそのかされて見に行くが、実は関心がない映画は寝てしまう。そして寝ても「いい映画だった」と思い込もうとした。

特に学生の頃は、白黒映画は眠気を誘った。この2本はその代表だろう。『キッスで殺せ』は、探偵が真相を追求するために街をさまようが、出てくる人が多すぎて覚えきれない。『都会のアリス』はやる気のない青年が少女と旅するだけで、何も起こらない。

今回2本を立て続けに見てみると、両方の映画で、孤独な男が放浪する姿が強く印象に残った。『キッスで殺せ』はいわゆるフィルムノワールだが、冒頭の裸足の女が息を切らせながら走るシーンに始まって、緊迫した画面が連続する。

出てくる男や女の顔がみんなへんてこりんでおかしい。そして主人公のマイク・ハマーは圧倒的に強い。女なんかに関心はない。いくつも出てくる階段をよじ登り、真相に迫る。そして出てきたのは核物質だったわけで、今見ても、本当に怖い。この映画が作られた1955年の2年前にアイゼンハワーが有名な「核の平和利用」の国連演説をしていることを考えるとなおさらだ。

『都会のアリス』は、革命の夢が破れた後の「豊かな社会」で、何もやりたいことがなくなった我らの世代の映画だ。偶然に任せて旅をするように人生を生きる、そんな生き方に昔は憧れた。いつのまにか、ただ忙しい人生を送ってしまったけれど。

2本の映画とも、その奥に偉大なる映画史がある。『キッスで殺せ』はフィルム・ノワールというジャンルを超えて、大いなるアメリカ映画を感じさせるし、『都会のアリス』からは、大好きな映画に憧れてどこにもたどり着けない寄る辺なさが伝わってくる。

さて今の学生は、これらを見て寝てしまうだろうか。

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