『カイエ・デュ・シネマ』のベストテン
フランスに『カイエ・デュ・シネマ』という月刊の映画雑誌がある。ゴダールやトリュフォーなどのヌーヴェルヴァーグの監督たちがそこで評論を書いていたという、伝説的雑誌だ。私は、たぶん80年代後半から定期購読をしている。
90年代までは、世界の映画の現状を知るために、貪るように読んだ。外国で開催された特集上映の記事を読んで、日本でその上映会を企画したことも一度や二度ではない。
ところが2000年代になってインターネットの時代になり、あまりその必要がなくなった。すべての情報は瞬時に駆けめぐる。そのうえ、紹介される映画が偏り過ぎて、最近はうんざりするようになってきた。
最新の12月号には恒例のベストテンが載っている。編集部が選ぶベストテンのほか、10名ほどの筆者のベストテンが挙げられている。それを読んで目を剥いた。
編集部のベストテンの1位は、レオス・カラックスの「Holy Motors」。これは来年日本で公開されるが、昨秋パリで見た。シネフィル好みの映画だが、まさか1位とは。いずれにしろ、カラックスにはかつての『汚れた血』のような鮮烈な輝きはない。
以下、2位はクローネンバーグの「Cosmopolis」。3位はコッポラの『ヴァージニア』、4位がアベル・フェラーラの「4:44 Last Day on Eartとジェフ・ニコルズの『テイク・シェルター』、ホン・サンスの『3人のアンヌ』の3本、7位が再びフェラーラの「Go Go Tales」、8位がミゲル・ゴメスの「Tabou」とソクーロフの『ファウスト』。10位がアイラ・サックスの「Keep the Lights On」。
いやはや、日本で未公開か、『ヴァージニア』や『ファウスト』のように、ひっそりと公開された作品ばかり並んでいる。たぶんフランスでもほとんどの人が見ていない映画ばかりだろう。
こんなベストテンはいけない、とつぶやいていたら、WEBRONZAから今年の「映画ベスト5」と「美術ベスト5」と「レストランベスト5」を書いてくれという依頼が来た。美術は容易いが、映画は難しい。頭を抱えている。それにしても「レストランベスト5」とは。
| 固定リンク
「映画」カテゴリの記事
- 『ディスクロージャー・デイ』のおもしろさと不可解さ(2026.10.07)
- 『ナギダイアリー』の新境地(2026.10.01)
- 『ビルマの竪琴』から『花と兵隊』へ(2026.09.27)
- 1年ぶりの海外で考えたこと:その(5)飛行機の映画(2026.10.03)


コメント