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2013年1月 6日 (日)

『対岸の彼女』の30代女性

最近になって、どうも偏った生き方をしてきたと思う。テレビを見ずに新聞と本を読み、映画を見て、美術展に行く。そしてその知識を学生に語り、文章にする。これでは普通の人々の生活や生き方はわかるわけがない。

とりわけ、一般のOLや主婦とはほとんど接する機会がなかった。しばらく前に角田光代の『森に眠る魚』を読んで、小学校前の子供を持つ母親たちの生活を目の当たりにした気がして怖かったが、今度は彼女が30代女性を描いた『対岸の彼女』を手に取った。

うまい。35歳の主婦小夜子は、ある時子供を預けて勤め始める決心をする。そこで出会った女社長の葵は同じ年で、独身。2人は全く違う性格なのに、なぜかどんどん接近してゆく。

同時に語られるのは葵の過去。高校生の時、女友達ナナコと仲良くなり、ついには家出をする。そして悲劇的な結末を迎える。葵はそれから大学に行き、海外旅行を繰り返し、起業する。

小夜子が勤める葵の会社はうまくいかないが、それでも小夜子は前に進もうとする。「なぜ私たちは年齢を重ねるのか。生活に逃げ込んでドアを閉めるためじゃない。また出会うためだ。選んだ場所に自分の足で歩いてゆくためだ」。

うまいのでするする読めるが、結局この小説は私にはわからなかった。普通の女性の「自分探し」のようなものが、やはり自分からは遠すぎる。まだ『森に眠る魚』のお受験を目指す主婦たちの方が、少しはわかる。

もっとも、30代女性を小説でわかろうとすること自体がおかしいのだろう。この年では、偏った生き方はもはや直らないか。


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