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2013年1月 5日 (土)

いまさら『キングコング』に驚く

この冬休みに見たDVDで一番驚いたのは、1933年のRKO映画『キングコング』。トーキーが始まってから出てきたSFやホラーのジャンルを追いかけて、ユニバーサルの『魔人ドラキュラ』(31)や『フランケンシュタイン』(31)を見ていたが、この映画には何回ものけぞった。

まず、これが映画を撮る映画だという点。誰も行ったことのない南洋で映画を撮ってひと儲けしようというカール・デナムは、自分でカメラも回す。怪物を撮るのが目的だが、「大衆が女を欲しがる」「大衆にはロマンスが必要だ」ということで、急遽街に女を探しに出かける。このリアルさ。

なぜかそこには、食べ物の施しの列に並ぶ貧しい女の群れが写る。29年の世界大恐慌の後遺症か。とびきりの美女を見つけたのも、八百屋で果物を盗もうとした貧しい女をよく見たら、という次第。

船が向かうのは南洋のドクロ島Skull Islandだが、着ているものやダンスからすると、インドネシアあたりのようだ。それのしても、銃に驚くいかにも「野蛮人」という描き方で、現在ではとてもできないだろう。これまた『国民の創生』や『ジャズ・シンガー』などと並ぶ「名作に人種問題あり」という1本。

キング・コングが出てくるのは40分ほどたってから。なんとこれがストップ・モーションの人形アニメだった。探検隊の人々を撮った映像との合成で、キングコングの人形アニメらしい稚拙な動きが何とも魅力的だ。

キング・コングがほかの恐竜たちと戦うシーンが、こんなに多いとは思わなかった。まるで恐竜大集合映画。冒頭の探検隊と野蛮人の戦いはどこかに行ってしまう。

カール・デナムは、何としてもこの恐竜を持ち帰ろうとする。「ブロードウェイに出して大儲けするのさ」。お金さえ儲かれば、この映画監督は別に映画を撮らなくてもいいようだ。さてどうやってニューヨークに持ち帰ったから全く見せられないまま(そのいい加減さもいい)、舞台は突然満員のブロードウェイの劇場へ。

そしてキングコングは劇場を抜け出し、エンパイアステートビルへ。このあたりは有名なシーンだが、デナムは言う「野獣を殺したのは美女だったのさ」。集まった新聞記者を十分意識した一言だ。いやはや、その現実感覚に驚いた1本。

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