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2013年1月10日 (木)

『アルマジロ』の見せる真実

昨日の『ロイヤル・アフェア』に続いて、偶然にまたデンマーク映画の試写を見た。今月19日公開の『アルマジロ』で、こちらは「アカデミック」とはほど遠い、戦場ドキュメンタリー。一昨年の山形国際ドキュメンタリー映画祭に出ていたが、見逃していた。

内容は、アフガニスタンの平和維持活動に半年間派遣されたデンマークの兵士たちを追ったもの。彼らは、コソボに行くつもりがアフガンだったり、友達が欲しいから参加したりと、どこにでもいそうな若者たちだ。

映画は彼らの日常を描く。「死ぬのは自分たちだけだ」と訴える村民の話を聞いたり、夜はパソコンでポルノ映像を見たりしているが、中盤からタリバン兵との銃撃戦も出てくる。地雷で3人の仲間が戦死するのを始めとして、何人もの戦士が負傷してゆく。

一番驚くのは、よくこんな撮影を軍が許したということだ。自問自答する若い兵士たちの日常を撮り、さらに戦場そのものをカメラに収め、殺されたタリバン兵さえも克明に写す。米軍や日本の自衛隊ではありえないだろう。いわゆるニュース映像と違って、このドキュメンタリーを見ていると、平和維持活動自体に疑問を持たざるを得ないからだ。

映画では、憲兵隊が負傷兵の殺戮を問題視したため、隊長が箝口令を布くところまで写す。完成後の軍の審査も経ているというから、信じられない。

最近どんどん軽量化し安価になったデジタルカメラがなかったら、この映画はできなかったという意味の新しさもある。5Dなどの軽いカメラに加えて、5人の兵士にヘルメットカムを付けさせたという。兵士の一瞬の表情が写り、戦場そのものの臨場感が溢れている。見ていると、だんだんその場にいる気分になってくる。

もちろんあくまでデンマーク兵士側からの見方だし、タリバン側や村民側の視点はないが、アメリカの要請による平和維持活動なるものに大きな疑問を突き付けることは確かだ。終わりに、参加した兵士たちのその後が語られる。それも含めて、映画でしかとらえられない真実がそこにある。


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