日曜午後のバッハ3時間
日曜の午後、紀尾井ホールでバッハの「マタイ受難曲」を聞いた。静岡県の磐田市を中心に活動している磐田バッハ合唱団が、モーツァルト・アカデミー・トウキョウと組んだ演奏会で、知り合いの知り合いがチェロを弾いているというので、誘われた。
クラシック・コンサートに行くのはずいぶん久しぶりだ。たぶん最後は10年ほど前のフェニーチェ歌劇場公演かもしれない。紀尾井ホールに来るのは確か「東京の夏 音楽祭」の時だから、15年くらい前か。
驚いたのは、800席の会場が8割がた埋まっていたことだ。この合唱団の知名度はわからないが、私のような知り合いだけではこんなに集まらないだろう。キリスト教徒なのか、聞いてみたい気もした。
曲が始まって、改めて感心した。当たり前だが、全曲ドイツ語の歌詞だ。それも内容はキリストの受難劇。日本人は何の関係もなかろう。それを日本人の歌手が朗々と歌う。会場は天井が教会並みに高く音響のいい、室内楽専用ホール。そして観客の多くが歌詞対訳を見ながら追いかけていた。
18世紀のドイツ語を3時間も聞いて楽しむ21世紀の日本人というのは、すごいとも言えるが、馬鹿みたいでもある。歌手やオーケストラの面々はみな黒のタキシードやドレス。日本人の猿真似も極まれりという気もする。
個人的には、十分楽しんだ。この曲は大学に入って、カール・リヒターが亡くなったばかりでその追悼で出たレコードを買った。CDではなく、大判のレコード。1人でアパートに籠って、全曲を聞いていた。このレコードとか、カザルスの弾く無伴奏チェロとか、よく聞いた。
コンサートは第一部が終わったところで、15分の休憩。後半は私も歌詞を追いかけて見た。ドイツ語はドイツ映画祭をやっていた頃に特訓したので、ところどころわかる。イエスが捕えられ、総督ピラトに差し出される。そうして十字架を背負わされ、ゴルゴダの丘へ。そして磔になり、息を引き取る。
終わると妙に感動した。歌手はエヴァンゲリスト(福音史家)役とイエス役が素晴らしかったが、少し声が不安定な歌手もいた。日曜午後の3時間を費やしたが、私にとっては何とも不思議な精神的時間だった。
家に帰ってネットで検索していたら、映画『サクリファイス』の最後のバッハはこの曲の第39曲のアリアだとわかった。
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