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2013年1月 8日 (火)

孫崎享は信じられるか

私は読んだ本に影響を受けやすい。昨年末に読んだ本でいまだに心理的に引っ張っているのが、孫崎享著『戦後史の正体』。一言で言うと、日本の戦後の政治家は、アメリカに従うか逆らうかでその政治生命が決まったというもの。

いわば米国陰謀史観である。田中角栄のロッキード事件まで、米国抜きで日中国交回復をやってしまった田中を失脚させるための陰謀と説明する。

著者の孫崎氏は外交官出身で、駐イラン大使や国際情報局長をやった後に、防衛大学の教授をやった人だ。いかにも国際諜報活動に精通しているようなキャリアだが、その人が米国の陰謀をばらすというのが、妙にリアリティがある。

そこで新年にもう一冊読んだ。新書の『日本の国境問題―尖閣・竹島・北方領土』。こちらはだいぶ面白さが落ちる。どうしてもおもしろいのは、米国がからんでくるところだ。北方領土問題は、米国がその領土をあえて曖昧なままに残し、日ソが揉めるように仕組んだというあたり。いくつかの証言を引用しているが、本当かな。

彼によれば尖閣問題も、米国が日中が揉めるように周到に準備したものということになる。こうなるといよいよ陰謀説だ。

それでもこの本がおもしろいのは、韓国や中国の見方を冷静に伝えて、結局領土問題は今の日本にとって「棚上げ」が一番と説くあたりだ。孫崎氏にしては極めて常識的な意見だが、騒いでも日本は一切得をしないというのは本当だと思う。

もう一つ。尖閣問題は、日本のものか中国のものかという問題は、歴史的には台湾のものか、沖縄のものかということになるという。日本が琉球王国を強制廃止して琉球藩を設置したのが1897年。それまで琉球は日本より中国に属していた時代の方が長いという。つまり、尖閣を「日本古来の領土」という根拠は壊れる。

領土問題に冷めた視線を送る気分になったが、同時にこの著者の私への影響も薄らいできた気がする。

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