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2013年1月19日 (土)

「自己啓発」の幻影

昔、映画ばかり見ていた時代に知りあった、自分より少し若い極めて優秀な男がいた。その後彼はビデオ会社に勤めていたはずだが、最近その消息を聞く機会があった。独立して「自己開発セミナー」をやっているという。何だそれは。

そんな疑問もあって、宮崎学氏の新書『「自己啓発病」社会』という本を買ってみた。この人の本は、『突破者』が実におもしろくてファンになったが、それ以外の本は力を抜いて書いているようでそれほどでもなかった。

この本も、そうした「早書き」の部類かもしれない。それでも気になったのは、「自己啓発」ブームは2000年代に始まったもので、とりわけ小泉政権末期の2006年くらいから大流行しているという指摘だ。「勝ち組」「負け組」という言い方が流通し、勝間和代と茂木健一郎に池上彰の本が売れ出した。

そして小泉純一郎や竹中平蔵、そして勝間和代までが依拠するのは、サミュエル・スマイルズの『自助論』という本らしい。これは何と1859年に"Self-Help"という原題でイギリスで出た本で、日本では1871年に『西国立志編』という題名で全訳されているという。

これを再び取り上げたのが、マーガレット・サッチャー。つまり英国病を救うために、国有企業の民営化を進め、まさに「自助」努力を促したらしい。

なぜかそれが21世紀初頭の日本で絶賛されているが、それは実はグローバリズムの弱肉強食社会を支えるために利用されたに過ぎないというのが、宮崎氏の主張だ。つまり負け組は自助努力をしない奴らだという論理で、格差社会を正当化しているという。

この本では、日本では『自助論』は主に竹内均の抄訳で読まれているが、全文を読むと全く違うものだということを証明する。ただしその部分は退屈なので飛ばし読みした。

とりあえず、「自己啓発」はおかしい。今は誰かに勝てばいい時代ではない。

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