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2013年1月12日 (土)

また、大震災の映画を見る

3月9日公開の篠崎誠監督『あれから』を見た。東京国際映画祭で見損ねて、気になっていた。漱石の「それから」みたいなシンプルな題名がいいなと、何も知らずに見に行ったら、「あれ」とは東北大震災のことだった。

つまり、大震災の後に、変わってしまった日常の話だ。靴屋に勤める祥子は、地震後恋人の正志と連絡が取れない。ようやく連絡が取れると、正志の兄から正志が震災後にまた心を病んで入院したことを知らされる。祥子のもとに現れる正志。

冒頭の過ぎ行く列車を見つめる祥子の目の動きを捉えたシーンから、映画らしい濃密な空間に引き込まれた。祥子を演じる竹厚綾が圧倒的な存在感を見せる。客の足型を取り、ぴったりの靴を売るという誠実な靴屋で淡々と働く姿が何とも清々しく、愛おしい。

これは篠崎監督の第一回作品『おかえり』と同じく、若いカップルの片方が心を病んだが、それをきっかけに再び強く結びつく作品かなと思う。そこに大地震の震動が加わり、余震が何度も画面に映る。地震をきっかけにして2人の新しい関係が始まるという設定だろうが、これは本当に必要だったのだろうか。

竹厚綾の抑制された感情表現と、人物の一瞬の表情の変化を逃さず、桜の花の散る様子を始めとして風景をシンプルに切り取る山田達也のカメラがあれば、大地震はなくても十分に成り立つ映画のような気がした。

いずれにしても、篠崎誠監督は、自分の原点に戻り、明らかにパワーアップした映像を見せてくれた。

『ヒミズ』や『おだやかな日常』もそうだが、劇映画に大地震が入り込むことで、素晴らしい映像が陳腐さをまとってしまう気がする。それはそのように見るこちらの問題かもしれないが。

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