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2013年1月 4日 (金)

『おだやかな日常』の世界観

今年最初に映画館で見た映画は『おだやかな日常』。佐藤忠男さんや「毎日」の複数の記者が年末に「今年の3本」に挙げたこともあって、期待していた。ところが見ている時からどうも落ち着いて見られず、見終わって複雑な感想を持った。

映画は、震災後に放射能の影響を恐れる2人の30歳前後の女性を中心に描く。サエコ(杉野希妃)は夫に捨てられ、幼い子供を抱えて必死で生きようとする。隣人のユカコ(篠原友希子)も放射能を恐れ、夫に関西に行くことを提案する。彼らを変人扱いするまわりの人々。

手持ちカメラで登場人物を追いかける撮影や、即興のように感情を爆発させる俳優たちの演技は素晴らしい。人々の表情につきまとうようなデジタルカメラが、震災後の曇った不安な心象風景をうまく表現していると思う。妙に白っぽく、明るさが足りないようなデジタル特有の画面が妙に印象に残る。

そして2人の女が次第に近づき、とうとう出会い、そして一致協力してゆく展開も周到に準備されている。ここにはある種のサスペンスとカタルシスさえある。

しかしながら、ヒステリックな2人を全面的に肯定する世界観にはどうしても同意できなかった。こんな話は、新聞とか「アエラ」とかでたくさん読んだ。彼女たちの考えを否定する気はないが、そんなに単純でいいのだろうか。映画はこの2人以外は、あまりきちんと描かない。だからほかの人々はカリカチュアのように見えてしまう。

実を言うと内田伸輝監督はこれが初めてで、話題を呼んだ前作『ふゆの獣』さえ見ていないので、これから見てみたい。

園子音監督の『ヒミズ』や『希望の国』もそうだが、どうも私は震災ものには厳しくなってしまう。そういえば園子音の映画も有名なクラシック音楽をガンガン響かせるが、この映画もバッハの無伴奏チェロを派手に使い過ぎていたと思う。あれくらい有名でかつ完成された曲を何度も使うのはどうだろうか。

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» 今年の1本目は『おだやかな日常』から。いきなり長編の大ネタバレの感想です。 [もっきぃの映画館でみよう(もっきぃの映画館で見よう)]
今年の鑑賞1本目は、元町映画館で2回目の「おだやかな日常」。 昨年の同所上映3日目(24日・祝日)で10人足らずだったのが、 3週目(5日土曜)で30人以上というのは、かなり評判がいいという ことか。新聞等での露出も年末年始に多かったことも影響している のだろう...... [続きを読む]

受信: 2013年1月14日 (月) 18時01分

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