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2013年2月25日 (月)

『横道世之介』の描く80年代

週末に沖田修一監督の『横道世之介』を見て、不思議な気分になった。とりわけ大学で教えている自分にとっては、自分の学生時代と今の学生を見る自分が表現されているようで、どうも他人事ではない気がした。

映画は1987年春からおよそ1年ほどを描く。高良健吾演じる横道世之介が、上京して法政大学に入学し、次第に友達を作ってゆく。とりわけ金持ちのお嬢さん祥子(吉高由里子)と次第に接近する。途中から何の説明もなく、16年後の2003年が挿入される。世之介を取り巻く友人たちのその後。

2つの時間を行き来する脚本が絶妙だ。ちょっと間のびした、即興のような会話とテンポが、不思議な時空を作る。カメラは人と人との間に漂う雰囲気をゆっくりとすくい取る。雪のシーンのクレーン撮影や、ラストのバスや階段のシーンの長回しのカメラもいい。フィルム撮影ならではの味わい。

共同脚本の前田司郎は、監督と中学や高校の同級生という。そして撮影は、『マイ・バック・ページ』などの山下敦弘監督作品や『桐島、部活やめるってよ』などで、ちょっとゆるい独特の画面作りをする近藤龍人。30代の若い作り手たちが作る(知らないはずの)バブル前の大学風景はどこかファンタジーで作り物めいているが、それがまた今風でもある。

冒頭に新宿東口が出てくる。今はルミネになったMY CITYや斉藤由貴の大きな看板。80年代風の大きなメガネや女性のワンレンにボディコン、男性のスタジャンやチェックのシャツ。祥子のような金持ちお嬢さんは確かにいたし、柄本祐演じる都会風を気取る田舎出身の同級生もいた。私が20代の頃の細部がよく揃っていて、何とも恥ずかしい。

最近の同じ時代を描いた映画に山下敦弘監督の『苦役列車』があったが、高良健吾はそこにも出ていた。80年代的な感じが似合うのだろうか。そういえば、山下監督も30代。

九州出身の私にとって世之介の故郷が長崎で、同郷人と話すときは長崎弁というのも、どうも他人事ではなく感じた理由かも。

久しぶりに新宿ピカデリーに行ったら、3階ロビーはおそろしくごった返していた。さすが日本一の観客数の劇場。原作の吉田修一さんが私と同じ回に見ていたが、誰も気づいていないようだった。

話は変わるが、今朝の朝日朝刊にアレクセイ・ゲルマンの訃報が出ていた。モスクワ発で葬儀のことが書かれていたので、現地の反響の大きさに驚いて今頃出したのだろうか。

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映画「横道世之介」★★★☆ 高良健吾、吉高由里子、 池松壮亮、伊藤歩、綾野剛、 きたろう、余貴美子出演 沖田修一監督、 160分、2013年2月23日より全国公開 2013,日本,ショウゲート (原題/原作:横道世之介) 人気ブログランキングへ">>→  ★映画のブログ★どんなブログが人気なのか知りたい← 「フツーの人だよ、 笑っちゃうくらい、フツーの人」 初恋の人の事を 30代... [続きを読む]

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