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2013年2月21日 (木)

わざと退屈な映画を作るクローネンバーグ

4月13日公開のデイヴィッド・クローネンバーグ監督『コズモポリス』を見た。ドン・デリーロの同名小説を映画化したものだが、これが相当変な作品に仕上がっている。

白の大きなリムジンに乗る若い男エリック(ロバート・パティンソン)。今日は大統領がニューヨークにやってきて、大幅な交通規制らしい。それでも主人公は床屋に行くと言い張り、リムジンに乗り込む。

どうやらエリックは金融で相当の金持ちらしい。リムジンにはいろいろな来客がやってくる。年上の愛人(ジュリエット・ビノッシュ!)や、健康診断をする医者、彼の「論理主任」という女性(サマンサ・モートン)など。

どうも主人公は人民元の投資に失敗して、巨額の富を失ったようだ。「あなたにはセックスの匂いがする」と繰り返す妻は、お金のない夫のもとを去る。道でエリックを待ち伏せた変な男(マチュー・アマルリック)は、パイをエリック顔に投げつけるが、なぜかそれをカメラで撮影する男たちがいる。

外では暴動も起きているが、どこか抽象的でリアルさがない。豪華な車内に外の雑音は一切聞こえない。車内で話す人も、外で会う人も、それぞれほとんどかかわらず、何の意味もなく消えてゆく。ほとんど物語らしい展開はなく、恐ろしいほどの抽象性が映画全体を支配する。

これはもう、わざと退屈な映画を作ったとしか思えない。一切の目的を失った主人公を、脈絡のない展開で見せてゆく。そして会話には、プルーストやロスコの名前がキッチュに飛び交う。資本主義と暴動とセックスと言葉の渦。

ドン・デリーロという小説家は名前はよく聞くが、これまで読んだことはない。ただこの映画を見ると、究極の現代小説のような気がする。たぶんその原作のスピリットを最大に生かしたのではないか。もちろん誰にでも面白い映画とは言い難いが、これもまた映画の今後の一つの方向を示す作品のような気がする。

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