徳間康快のイメージ
佐高信著『飲水思源 メディアの仕掛け人 徳間康快』を読んだ。昨年末にどこかの書評の「今年のベスト3」で選ばれたので買ってあった。著者の佐高信氏は、かつて会社に縛られたサラリーマンを揶揄して「社蓄」という言葉を広めた頃はおもしろかったが、最近はどうもワンパターンの体制批判というイメージが強い。
その佐高氏があの徳間康快の好意的な評伝を書いているというのが、気になった。これまた私の勝手なイメージだが、徳間康快には、何だか右翼の黒幕か何かのような怪しげな感じを抱いていた。
この本を読んで私は本当に彼の晩年しか知らないことに気がついた。つまり、彼が率いる徳間書店が大映を買収し、毎年中国映画祭を開催して東京国際映画祭のトップになり、亡くなる直前には石原慎太郎都知事に頼まれて、東京都写真美術館の館長になったイメージだ。あるいは『敦煌』や『おろしや国酔夢譚』といった合作の製作総指揮。
ところがこの本を読むと、それまでの彼はむしろ反体制の旗手だったことがわかる。まず読売の記者で、戦後の労働争議で追い出される。そこで徳間を迎えたのは、何と『民報』の松本重治。ジャーナリストで国際文化会館を作った人だ。
それから真善美社を設立して、野間宏の『暗い絵』や埴谷雄高の『死霊』を出すが倒産。新光印刷を立ち上げたり、『アサヒ芸能新聞』に参加して週刊誌にしたり。そして徳間書店を設立してからは、硬派の「現代史出版会」を立ち上げて鎌田慧や本田勝一の本を出したり。あるいは『東京タイムズ』を買収して潰したり。
そして宮崎駿を助ける形でスタジオジブリを設立。今日の繁栄の礎を築く。しかし今や大映は角川に売られ、ジブリも独立して、今はディズニーと日テレのドル箱だ。
そう言えば、『コクリコ坂から』に徳間を思わせる人物が、新橋の出版社長で学園理事長として気持ちの悪いくらい善人として描かれている。あれは、ジブリのせめてもの追悼だったのだろう。
本自体はまとまりがなく、やっつけ仕事に近い。そのうえ徳間を絶対善、読売のナベツネを絶対悪として描くなど、図式的過ぎる。それでも徳間の魅力は十分に伝わってくる。
東京国際映画祭のトップだった時に、田壮壮監督の『青い凧』やアメリカ映画『セブン・イヤーズ・イン・チベット』の出品の際して中国政府から上映中止の要請が来たが、彼は断ったという。それ以降中国との関係が絶えたことを残念がっていたという。そんな人だとは知らなかった。
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