久しぶりのオリバー・ストーン
オリバー・ストーンと言えば、ベトナム戦争帰りの監督で、かつては『エル・サルバドル』(86)や『プラトーン』(86)で、戦場を描きながら戦争や世界の矛盾をあぶりだす、社会派の代表だった。私は四半世紀前に働き始めた頃、彼が東京のあるシンポジウムの基調講演をやるというので、聞きに行ったこともある。
その後はあまり見ていない。『ウォール街』(87)と『7月4日に生まれて』(89)くらいだろうか。その押しつけがましさが、何となく嫌になったのかもしれない。
今回久しぶりに見たのは、3月8日公開の『野蛮なやつら』。麻薬栽培で大富豪になり、優雅な生活を送っている2人の男と1人の女の話だ。そこにメキシコの麻薬組織が提携を申し入れ、それを断ったことから、女は誘拐される。
物語は、女性の過去を振り返るナレーションで進行する。時おり、白黒の画面を交えながら、全体にゴージャスでノスタルジックな雰囲気に満ちている。描かれている内容は大麻の取引であり、そのためにどんどん人は死んでゆくが、どこか嘘のように甘美だ。
3人を演じる役者もいいし、その脇を固める麻薬取締官のジョン・トラボルタが抜群におかしいし、メキシコ側の腹心役のベニチオ・デル・トロも残酷だがどこか間が抜けている。
どこか遠くを見つめるような演出は、いわゆるアメリカン・ニューシネマの『俺たちに明日はない』や『明日に向かって撃て』にあるようなゲーム感覚に近い。だから、3人組とメキシコの麻薬組織の戦いを余裕で楽しめばいい。
3人のリアリティのない優雅な暮らしやマリファナを作る巨大な栽培場、そしてメキシコの麻薬の女王の贅を尽くした邸宅などを見ていると、オリバー・ストーンも変わったなあと思う。この3人はアフリカやアジアに慈善団体を作っているが、監督もそんな心境だろうかと考えてしまう。
それにしても、アフガニスタン派兵の影があり、最近のテロリストを思わせる殺害も出てくるので、妙に落ち着かない。今、なぜこの映画を作ったのだろうか。いろいろ考えてしまう、何とも不思議な映画だ。
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