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2013年3月25日 (月)

2回見るべき『ザ・マスター』

ポール・トーマス・アンダーソンは、それこそ「映画的」としか言いようのないショットを次々に見せてくれる久々の大物監督だ。公開が始まったばかりの新作『ザ・マスター』を見に行った。実は昨秋ベネチアで見ていたが、日本語字幕で見たかった。

もともと話が飛び過ぎてわかりにくい。そのうえ、主人公フレディを演じるホアキン・フェニックスの英語がほとんど聞き取れない。イタリア語字幕だけではしんどかったが、それでもおもしろさは十分に伝わってきた。

今回見ても難解さは変わらなかった。ただ結末までわかっているので、どんなに理不尽に話が展開しても安心して楽しめる。その意味では2回見るべき映画だろう。

物語は、第二次世界大戦中に海軍に務めていた酒好きで乱暴者のフレディが、戦後は新興宗教を主宰する「マスター」に出会うというもの。最初の船の中や海岸は、とても戦争中とは思えないほどシュールで抽象的だ。フレディがデパートで写真家をしたり、その後キャベツ畑で働くシーンも、何ともスタイリッシュでいい。

フィリップ・シーモア・ホフマン演じる「マスター」が率いる宗教団体はいかにも怪しげだが、その妻役のエイミー・アダムスが巧みに操る。妻や家族が嫌がっているのにもかかわらず、なぜマスターがフレディを可愛がるのか、あるいはフレディはなぜマスターについてゆくのか、わからない。

フレディとマスターの不思議な友情は、ホモセクシュアルを超えて、文化人類学的な何かを感じさせる。アル中で乱暴で女好きで下品という徹底的な悪の象徴としてはフレディは、怪しげな論理で金持ちを次々に騙してゆく新興宗教とどこか裏で通じるところがあるのかもしれない。

3人の名優はとんでもないアップのショットにも耐えて、映画的なショットを次々と見せてくれる。フレディが幼なじみに会いに行って、母親から結婚していたと聞くシーンや映画館に電話がかかってくるシーン、マスターがフレディに「中国行きのスローボート」の歌を歌うシーンなど、わけがわらないがゾクゾクしてくる。1950年代の映画のような、濃厚なカラーがたまらない。

見ていると、これは酒を飲んだフレディの幻想ではなかったかと何度か思うが、最後にもう1回やられる。1回目は戸惑うかもしれないが、2度見ると本当におもしろい映画だ。

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