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2013年3月22日 (金)

東急の愚挙

東横線と副都心線がつながったので、さっそく乗ってみた。小竹向原から自由ヶ丘まで。従来なら2回か3回乗り換えて約1時間かかったのが、26分。中目黒で地上に出るまで、半信半疑だった。だけど果たしてこれで便利になった人はどれだけいるのだろうか。

(憧れの)東横線に住み、渋谷でJRや銀座線や井の頭線に乗り換えていた人は、地下5階の駅は確実に遠くなる。便利になるのは、半蔵門線に乗り換える人か、新宿3丁目や池袋に通う人、あるいは練馬区や埼玉から横浜方面に通う人(いるのか)。通勤レベルで言えば、間違いなく不便な人が多い。

新宿伊勢丹はこのために改装をしたらしい。だけど、横浜や東横線に住む人が、新宿伊勢丹や池袋に買い物に行くだろうか。ひょっとすると新宿ピカデリーやバルト9は、渋谷の映画館と比べたらありかもしれないが。埼玉県民が横浜中華街に行きやすくなったところで、実際に行く人はわずかだろう。

列車内の雰囲気も変わる。西武や東武の車両には、サラ金や質屋の広告が溢れている。そんなところに、ファッションの広告は出せない。距離が長くなったから広告料は最初は上がるだろうが、東横線というブランド力の落ちた車両に出すクライアントの数は減るだろう。結局、東急の広告収入は下がるに違いない。

そんなことより、何よりも失われたのは、渋谷の風景だろう。東横線の渋谷駅は、東京には稀な駅らしい風情をもった駅だった。東京駅も新宿駅も何だかわからないし、ここに勝つのは上野駅くらいしかなかった。みんなが乗り換えの時に、窓越しかもしれないが、渋谷の風景を目にしていた。それが全く無くなった。

私は勤務先の大学に行くのに時々地下鉄でなくバスに乗る。時間は5分から10分余分にかかるが、そこで目にする風景の一つ一つの何と豊かなことか。理想は都電の復活とさえ思う。世界的にも市電=トラムウェイはどんどんできている。生活の豊かさとはそんなものだと思うのは、暇な大学教師の戯言か。

そういえばあまり書かれていないが、地下の東横線渋谷駅の設計は安藤忠雄だ。一見カッコいいが、わかりにくい、使いにくい。そういう美術館をいくつも作った人だけのことはある。このことも含めて、今回の事は東急の愚挙である。

付記:午前中にさっそく2人の女性から賛同のメールが届いた。

映画評論家「個性のない、汚い、歩きたくない人間無視の街。日本の国の政治そのまま、目先の金に目がくらみ、なんのヴィジョンもありません」
映画会社勤務「東横線・渋谷駅は駅らしい風情がありました。吉永小百合『泥だらけの純情』(中平康監督)には、印象的にこの駅の場面がありますね」

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