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2013年3月 5日 (火)

ゴンドリーの愛おしい小品

もともと高校生を中心とした映画には興味がない。ましてやニューヨークのブロンクスの悪ガキ高校生たちが乗るバスの中が舞台と聞いて触手が動かなかったが、ミシェル・ゴンドリー監督の新作ということで4月27日公開の『ウィ・アンド・アイ』を見に行った。

まず、高校生たちの肌の色の多様さに驚く。登場する20人くらいの高校生のうち、いわゆる白人は2割くらいで、アフリカ系、ラテン系、インド系などが入り混じっている。彼らが学期が終わって、近くの店に預けていた携帯やスマホを受け取ってバスに乗るところで映画は始まる。

とにかく全員が大声でしゃべっている。俗語が多いうえにアクセントも強くてとても聞き取れない。ドキュメンタリーのような展開を呆然と30分くらい見ていると、だんだんと個々の高校生の性格や考えが見えてくる。

乗客のばあさんと喧嘩したり、バスが渋滞している時にピザを買いに行ったり、ゲイのカップルが泣き出したり、パーティの招待メンバーを決めたり。携帯電話やメール、動画がそれに加わって不思議なコミュニケーション空間が出来上がってゆく。

そして高校生は1人、1人と降りてゆく。好きな男の子を追いかけて突然バスを降りるナオミ。外の風景も街中から次第に寂しくなる。そのうえ、だんだんと夕方になり、暗くなる。自分の死んだ父親について語ったり、動画でのみ出てくるイライジャの死が伝わってきたり。最初は気にも留めなかった太った女性運転手さえも、何となく味がある感じに見えてくる。

混乱から静寂へ。自分とは全く縁遠いはずのブロンクスの悪ガキたちが、だんだんと愛おしく見えてくる小品だ。この映画を見て、エットレ・スコラの『ローマの人々』(2003)という小品を思い出した。こちらはバスを時々写しながら、ローマのあちこちのエピソードを写したものだが、人間への暖かいまなざしが共通している。

ところで、この映画にはアジア系の高校生がいなかった。ブロンクスのような人種が多様な地域は、アジア系は「危険だ」と避けるのだろうか。少なくとも日本人はそうだろう。そういえば私も80年代後半に一度だけ行ったニューヨークで、ブロンクスには行っていない。

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