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2013年3月20日 (水)

『カルテット!』を見てオペラを見たくなる

昔オペラが好きだったというと、信じてもらえないかもしれない。実は80年代半ばから90年代にかけて、かなりのCDを買いこみ、MD(懐かしい!)に複製して電車の中でも聞いていた。特にイタリアのヴェルディとプッチーニがお気に入りで、歌詞をイタリア語で覚えているアリアもいくつかある。

だからオペラがテーマの映画は、まず見に行く。4月19日公開のダスティン・ホフマン監督『カルテット!』は、元音楽家たちのための老人ホームが舞台という。まるでダニエル・シュミットの『トスカの接吻』(1984)ではないか。ミラノの「ヴェルディの家」という、元音楽家たちの集まる老人ホームを撮ったドキュメンタリーがいかにおもしろかったを思い出しながら、見に行った。

こちらは劇映画で、田園の中に立つ「ビーチャム・ハウス」が舞台。「椿姫」の曲に乗って、その住人たちが次々に出てくる。その老人ホームの資金集めのためのガラ・コンサートが近づいている。そこへやってくるのが、ソプラノのスターだったジーン(マギー・スミス)。

ジーンの元夫でテノール歌手だったレジー(トム・コートネイ)は動揺して、最初は会うのさえ拒絶する。しかし、メゾソプラノのシシーやバリトンのウィルフと共にかつての名カルテットが揃えばガラは成功だと説得される。レジーとジーンの再会の物語に、ガラ・コンサートの準備の物語が重なって、古典的な心躍るメロドラマとなった。

演出は端正で気を衒わない。ジーンがホームに着いて広間に立つと、2階から元音楽家たちが「ブラーヴァ!」と声を合わせ、ジーンは舞台のように両手を広げる。ジーンに出演を説得するための夕食会に出かける時、レジーはジーンの腕を取って優雅にエスコートする。

見ていて気持ちのよくなるような細部は、妙にリアルなまわりの老人たちに支えられている。最後のクレジットでわかるが、4人以外で出ているのは、元オペラ歌手や演奏家、俳優などキャリアたっぷりの老人たちだ。

最後のクレジットの謝辞の最初にダニエル・シュミットの名前があった。プレス資料を見てわかったが、まず『トスカの接吻』から着想を得て舞台が作られ、それを映画にしたのだという。そのこなれたセリフがあって、あれだけの出演者が揃ったところで、ダスティン・ホフマンは凝った演出をせず、最後に至るまで無駄を削ぎ落とすことで、愛すべき映画に仕上げた。

久しぶりにオペラを全曲聞きたくなった。

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