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2013年3月11日 (月)

『草原の椅子』に少し失望

ようやく『草原の椅子』を見た。『八日目の蝉』で驚くべき完成度を見せた成島出監督の新作なので、期待していた。映画評でも朝日で秦早穂子さんまでホメていたし。もちろん、悪くはなかったのだけれど。

物語は、50になった大企業の社員と同世代のカメラ屋の社長が仲良くなり、これにふとしたことから自分の家にやってきた4歳の子供と、陶器屋を営む美人の女主人がからまって、最後は4人でバングラデッシュに旅行するというものだ。

一言で言うと、50歳にして自分の人生は何だったかと振り返る話。まさに自分の世代の映画だし、成島監督も会社員を演じる佐藤浩市も社長役の西村雅彦も私と同世代。だけど、その通俗性というか、いかにもありそうでない夢物語を丁寧になぞる展開にどこか引いてしまった。

佐藤浩市が惹かれる女性を演じる吉瀬美智子が、美人すぎる。品のいい小さな陶器屋を一人で営み、和服を着て日本酒が好きな楚々とした美人なんて、想像の産物でしかない。あるいは自分の子供を放棄する夫妻を演じる中村靖日と小池栄子も、いかにも現代風でありそうなところが、カリカチュアに見える。

この両極端の間にいる、佐藤浩市と西村雅彦の中年像もまた典型的すぎる。佐藤は上司と部下の板挟みにあう、中間管理職。西村は若手社員をリストラせざるを得ないオーナー。西村が礼儀を知らない中国人の団体客を追い返す場面なんて、あまりに型通りではないか。

もちろん、佐藤と西村の演技はいい。カメラも華麗に映像を見せるわけではないが、人間同士の感情が発露する場面を、長回しできちんと撮る。俳優たちの生の演技の鼓動が伝わってくる。西村は『東京家族』の父親役より、こんな饒舌なタイプがずっと合っている。

佐藤の会社がカメラメーカーで、西村もカメラ店主というのが良かった。バングラデッシュで、西村が子供をカメラで撮るところを遠くから佐藤がカメラで撮る。さりげない、いいシーンだった。

実は、最初にバングラデシュの風景が出てきた時、「テレビみたい」と思った。その後の佐藤の会社のシーンも。慣れてくると、その平板さは気にならない。後でパンフレットを見たら撮影は長沼六男だったが、初めてのデジタルという。やはりデジタルは難しい。

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