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2013年3月30日 (土)

『セレステ&ジェシー』は「アエもん」映画

映画史には、自己愛の系譜がある。多くは監督と主演を兼ねて、ひたすら自分の存在を訴える。古くは「魔術師」メリエスから、オーソン・ウェルズ、ジャック・タチ、クリント・イーストウッド、ウッディ・アレンまで。本人は出ないが、フェリーニやヒッチコック(一瞬出る)にもそんな自己愛が充満している。5月25日公開の『セレステ&ジェシー』もそれに連なるような気がする。

この映画は、セレステという30代女性の物語。冒頭、出た瞬間から美と知性で光っている。映画は、彼女が野心はないが優しい夫と別れて、新しい道を歩むさまを彼女の視点から描く。いわゆる揺れる複雑な女心、というやつ。

演じているのはクインシー・ジョーンズの娘で、女優、モデルとして活躍するラシダ・ジョーンズ。ロスのトレンド・リーダーとしても有名らしいから、まさに映画の役柄そのものだ。

トレンドに関する本を出し、企業のPRを手伝う会社を率いるセレステは、まさにセレブで、女性の憧れの的だ。そんな彼女にも人並みの悩みがあり、恋愛というのは美人でも仕事ができてもうまくいくとは限りませんよ、という話。

たぶん、日本人でも同感する女性は多いのではないか。かつて「アエラ問題」、略して「アエもん」という言葉があった。『アエラ』で、20代から40代くらいの働く高学歴の女性たちに特有の贅沢な悩みを特集すると、よく売れた。これを「アエもん」と呼んだが、この映画を見ていて、久しぶりにこの言葉を思い出した。

「アエもん」は、その計算されたマーケティングが鼻についたが、この映画もまたそのうますぎる展開があまり好きになれなかった。撮影も編集も繊細で、よくできた可愛らしい映画ではあるのだが。

監督はラシダ・ジョーンズではなく別の男性で、リー・ストランド・クリーガーという。それでもこの映画はラシダ・ジョーンズの自己愛映画だと思う。ただし歴代の巨匠たちよりも、むしろ『アエラ』に近いかもしれない。

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受信: 2013年4月 3日 (水) 14時28分

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