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2013年3月24日 (日)

ヒッチコック本人が映画になった

ヒッチコックという監督は、もちろん映画もおもしろいが本人自体が見て楽しい。お腹がたっぷり出た恰幅のいい姿で、自分の映画に平然として出てくる。そうでなくても雑誌やテレビに本人が出ていたので、彼の顔は誰でも知っている。そんな彼が『サイコ』を作る様子を描いた映画が、4月5日公開の『ヒッチコック』。

ヒッチコックを演じるのは、アンソニー・ホプキンス。そしてその妻アルマがヘレン・ミレンで、『サイコ』のジャネット・リー役はスカーレット・ヨハンソンという豪華キャスト。

映画はヒッチコックが『サイコ』の脚本を書いてパラマウントに映画化を断られ、自分の豪邸を担保に入れて映画を撮る様子を描く。そこに妻アルマとの確執や若いブロンド女優たちへの思いや検閲とのゴタゴタがからまる。とりわけ妻のアルマは若い脚本家の別荘で脚本を書いており、ヒッチコックの嫉妬は募る。

シャワー中の殺人シーンを、ヒッチコック本人がナイフを振り回して演技指導する迫力満点のシーンもあるが、全体としては人間ヒッチコックを描くことに終始する。つまりお金の心配をし、妻や女優に嫉妬し、不安で眠れないという普通の人間としてのヒッチコック。

アンソニー・ホプキンスの佇まいや動作はそっくりだし、時々言いたいことをピシリと言うアルマ役のヘレン・ミレンは見ていて気持ちいい。だからおもしろいけれど、全体にどこか下世話な感じがする。あのヒッチコックがこんなにわかりやすくていいのだろうかと。

そういえば小林信彦さんが『週刊文春』に、スタジオがみみっちくはないかと書いていた。確かにあれでは東映の大泉撮影所だ。ヒッチコック夫妻がパラマウント撮影所に入る時なんて、もっとみんなが騒いだのではないかと勝手に想像するのだが。

それでも、アンソニー・ホプキンスのヒッチコックとヘレン・ミレンのアルマを見るだけで、十分に見る価値がある。

この映画を見た後に、日本でもこんな映画があったらいいのにとふと思った。原節子への思いに悩みながら映画を撮る晩年の小津安二郎とか、ベネチアに行って、何とか賞を取りますようにと祈る溝口健二とか、『人情紙風船』を撮り終えて試写の日に赤紙をもらう山中貞雄とか。

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